Haploid plants produced by centromere-mediated genome elimination
Ravi & Chan Nature (2010) 464:615-618.
doi:10.1038/nature08842
米国 カリフォルニア大学デービス校のRaviとChan は、TILLING法によりシロイヌナズナのセントロメア特異的ヒストンCENH3の突然変異体cenh3-1 を選抜した。この変異体は胚致死性のヌル変異体だが、GFPタグをつけたCENH3(GFP-CENH3 )やCENH3の超可変N末端尾部ドメインを変種ヒストンH3.3のものに換えてGFPタグをつけたGFP-tailswap をCENH3 プロモーター/ターミネーター制御下で発現させることによって胚致死性を解除することが出来た。GFP-tailswap 植物は正常に細胞分裂を起こし、体細胞に異数体は検出されないが、減数分裂で異常が起こり不稔となる。しかし、野生型の花粉で交配することで野生型の60-70%程度の稔性が得られた。このF1世代は、発芽率が低いが、発芽した植物の中にGFP-tailswap 母親由来の染色体が排除されて父親由来の5本の染色体となった半数体植物があった。半数体植物は野生型の母親にGFP-tailswap の花粉を交配しても得られ、このような植物は細胞質も含めて完全に母親由来の半数体ということになる。半数体植物は基本的に不稔だが、染色体の倍加が起こることがあり二倍体(倍加半数体)の後代が得られた。また、GFP-tailswap 植物と天然の四倍体シロイヌナズナ(Wa-1)を交配することで二倍体の後代が得られた。よって、セントロメアを介したゲノム排除を利用することにより多倍数体の倍数性を半分にすることが可能となる。この手法はあらゆる植物種の半数体作製に拡張可能と考えられ、①組織培養を介さない、②雌性半数体、雄性半数体のどちらでも作製できる、③ハイブリッド種子の作製に用いられる細胞質雄性不稔系統の作出を早めることが出来る、④遠縁交雑による稔性障害を回避することができる、といった利点があり、育種を大幅に加速することができる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます