RAS1, a quantitative trait locus for salt tolerance and ABA sensitivity in Arabidopsis
Ren et al. PNAS (2010) 107:5669-5674.
doi:10.1073/pnas.0910798107
シロイヌナズナのエコタイプShakdara(Sha)は、タジキスタン シャクダラ山脈の標高3400m付近で採集されたもので、その種子は様々なストレスに対して耐性を示すことから、Landsberg erecta (Ler )と掛け合わせて作成された組換え近交系集団(RILs) を用いたQTL解析が行なわれている。米国カリフォルニア大学リバーサイド校のZhu らは、Ler × Sha RILs を用いて、芽生えの葉色と根の伸長に関しての塩ストレス耐性とアブシジン酸(ABA)非感受性を示す第1染色体上のQTLを見出し、このQTLのマップベースクローニングを行なった。同定された遺伝子(At1g09950、転写因子様タンパク質をコード)をResponse to ABA and Salt 1 (RAS1 )と命名し、Ler とShaの対立遺伝子の配列を比較したところ、ShaのRAS1 はC末端領域に未成熟なストップコドンが見られ、Ler との間に2箇所のアミノ酸変化を含む16箇所の塩基置換が見られた。Sha由来のRAS1 対立遺伝子を含むLer バックグラウンドの準同質系統NIL(RAS1 )は塩耐性とABA非感受性を示した。また、Ler とNIL(RAS1 )とのF1世代は塩およびABA感受性を示すことから、Ler のRAS1 対立遺伝子が優性であることが判った。Ler のRAS1 をNIL(RAS1 )、Sha、Ler で過剰発現させるとそれぞれの対照よりも塩およびABA感受性が高まり、エコタイプCol-0のRAS1 T-DNA挿入変異体、Ler のRAS1 RNAi系統は塩およびABA耐性が対照よりも高くなっていた。RAS1 は通常の条件下では殆ど発現が見られないが、塩およびABA処理により一過的に発現が誘導された。abi1-1 変異体とRAS1 過剰発現個体とのF1はABA非感受性であることから、RAS1 が機能するためにはABAシグナル伝達経路が機能している必要がある。以上の結果から、C末端の欠損により機能喪失したRAS1がShaのABA感受性の低下と塩耐性をもたらしていると考えられる。
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