始まりは、5月だった。
ある、世界戦の、控え室。取材をしている、さなか。
ある若者が、私の元へ、寄ってきた。
「あの~、三なんですが」
はあ? とっさに、言われた意味が、分からなかった。
「あの~、一、二、三、の三になる、三瓶一樹(さんぺい・かずき)と言います」
ああ、それで、分かった。そのジムにいるボクサーの名前に一(田口良一)、二(仁平宗忍)、そして、三(三瓶一樹)がついている。
いわば、1・2・3トリオといえる。そう書いたことが、あった。
すでに、「一」は、何度も、無名の頃から書いていた。
この8月25日。「一」は、あの、ボクシングファンだけには知られている井上”怪物”尚弥相手に、初防衛戦を行なう。
しかし、パンチ力、テクニック、力量、すべてにおいて、怪物がまさっており、おそらく、ベルトは失う。人間的にも、すっかり、地に落ちてしまっているだけに、再起はかなり、厳しい道になるはずだ。
「一」には、まさに、一から出直す、いい機会かもしれない。
そして、「二」こと、「仁」は、この日に2試合控えている世界タイトルマッチの、いわば、露払いとして、先陣を斬って、第一試合に登場。
すでに、相手の久野喬を、3-0の判定で下していた。
私が試合前に書いた記事を読んで、「よ~し! テンション、上がったあ!」と、快哉を叫んでいたと言う。
戦いに向かう「気持ち」への、効果は、何がしか、あったようだ。
そして、今、横に立つ「三」。
「仁」の記事を書いた時点で、すでにデビュー戦で負けていた。
むろん、そこで負けても、その後、チャンピオンになったボクサーは、何人かいる。まあ、いずれ、タイミングが合えば、書くかも・・・・・程度に思っていた。
それが、見るからに、書いて欲しいという、表情。
「あの~、7月3日に試合、決まったんです。相手は」と、話し始めた。
真剣なまなざしに、見えた。
そもそも、それが勘違いを、産むことになるとは・・・・・・。
「ああ、それでは、書かなくちゃ、いけませんねえ。では、一応、ケータイの番号、教えてください」
聴いて、取材ノートに、メモした。
「そうですね。6月に入ったら、連絡入れます。スパーリングとか、あるでしょうし。それを見て、判断します」
聴きもしないのに、確か、「河野公平さんに憧れて、プロボクサーになろうと、思った」などと、話し始めたので、「そういうのは、また改めて、その時に」と、切り上げた。
こちらも、今夜の取材が今からある。相手の、真剣さは、わかった。
まあ、少なくとも、かつて現役の時の小林生人のような、失礼なクチのきき方はしていないし、まともな人物。
そう、感じた。その時は・・・・・・・・。
6月に入って、連絡をとった。日曜日。午後4時。
寝てもいない。仕事も、していないであろう時。練習も、していないはず。ケータイが、手元にあると思われる時を狙って、電話をかけた。
ところが! ・・・・・・・・出ない! 呼び出し音が、長く続いた。
1度、切り、また掛け直す。
だが、同じだった。
一体、どういうことなのだろう? こちらから申し込んだ訳では無い。三瓶の方から、お願いしてきたというのに・・・・・。
では、と、同僚ボクサーに、三瓶の電話番号と、メールを尋ねたところ、返って来た番号は、やはり、私が先日かけた番号と、同じであった。
こんな奴を、一瞬でも信じた自分を後悔。しかし、書いてもらいたいのだろうとも、一方で想う。
やめようか、と思いつつも、その後、ジムへ、ファックス。連絡をくれるようにと、一文を添えて。
だが、ここでもまた、返信無しの、無しのつぶて・・・・・。
それから、数日して、彼の担当トレーナーに会う機会があった。
聞いてみた。
スパーリングとかの予定は、無いんですか? あれば、見に行きますけど。
「いや、全然、無いね」
試合があるのに? どこか、体の調子が良くないとか?
「う~ん、まあ、あまり、良くないというか・・・・・練習あまり、出来てないんで」
だから、出ない? でも、試合を中止しようか? と考えるほど、ひどくはないようだ。
なんとも、雲をつかむ感触。クチをにごす、トレーナー。あまり、三瓶とは、意思の疎通が、うまくいってないようだ。
トレーナーは、いっておくが、とても優秀な能力の持ち主。三瓶なんぞには、もったいない人。
気になり、ジムの会長に相談した。
「三瓶に、連絡させるようにする」 そう言ってくれた。
だが、それでも、三瓶からは、まったく、何もなし。なんと、三瓶、試合は、勝ったようだ。
そして・・・・・・・
他のボクサーを取材してた時、三瓶が手伝いに来ていた。私の顔を見て、アッ! という、まずい人に会ったという表情。
ジムの会長が、キチンと対応して、「話すように」と、三瓶に。
三瓶は、いう。
「電話は、かかってこなかったです。どうして、来ないんだろう?と、気になっていた」
私は、 改めて自分のケータイの、送信記録をめくってるうちに、嫌になってきた。気のいい会長は、「掛け間違ったんでしょう。そうですよ」と、苦笑。
三瓶には、こう告げた。
「間違っても、君の記事は、絶対に書かない!」
本当に、気になっていたのなら、自分から連絡先を調べる努力をするはず。世界チャンピオンでもあるまいし、誰からも取材は、なかなか来はしないのだから。
平気で言える、生来の嘘つき、か。
三瓶は、仕事を持ってるのかどうか、知らない。ちょこちょこ、後楽園ホールに同僚選手の手伝いに、来ており、そのせいか、会長には可愛がられているように見える。
だから、その人まで巻き込んで、掛け間違ったなどということはない、といまさら言い直すのもなあ~。それにしても、人迷惑な性格の、三瓶。
こんなやつに・・・・・と、想いつつ、最後の確認を、してみた。
今度は、土曜日。午前9時50分。
電話を入れてみた。呼び出しコール。
辛抱強く、待った・・・・・待った・・・・・・・・・出たっ!
「失礼ですが、そちらは、三瓶一樹さんですね?」
「はい」
やっぱり!
「ライターです。ウソをつくのは、やめてもらえませんか」
「あっ!」
驚きの声。
「この、同じ番号にこの前も、2度、かけたんですよ」
あわてふためいた、三瓶。こう言って、切ろうとした。
「今、仕事してるとこなんで」
平気で、その時その時、想いついて、ウソをつけるこの男。
「わかりました。では、自分のそのケータイで、着信履歴を調べて、自分のウソを認めて、後ほどで良いですから、謝罪の連絡を下さい!」
あれから、15日以上過ぎた。
いまだ、三瓶から、連絡も、謝罪の一言も無い。
この手合いの、若者が、増えつつある。
他のスポーツなら、これほど、書くこともない。だが、こと、プロボクシングは、支援者がいるから、続けて行ける、つらくて、苦しい格闘技だ。
むろん、チケットを買ってくれる、金銭的支援者という意味も、合わせ持つ。
辞めたい、という、ココロが折れかかったとき、その背中をポンと叩き、後押しと、励ましをしてくれるのが、その人達だ。
最初は、だませても、すぐにバレるウソを平気でつく三瓶。
この、ど~しょうもない、人間として、欠落した性格を直さない限り、支援者は増えず、引退は早いだろう。
心許せる友達も、少ないようだし。
今、言って置く。ボクサー、辞めなさい!
顔を見ると、目を伏せて通り過ぎようとするので、この場を借りて、公けにした。
三瓶一樹。人を、だまし続けると、いつか人生に破綻が、押し寄せる。
そのことを、今、教えておきます
===================================================
8月9日の深夜、22時10分。
やっと、・・・・・・三瓶自身から、電話がかかってきた。
とある、ジム トレーナーが心配し、三瓶にいろいろ、話して聞かせた「結果」の、シロモノだ。
当然、開口一番、謝罪の言葉から始まる。そう、思っていた。
ところが、彼のクチから出てきた日本語は、呆れ果てるものだった。
「記事、削除してください。親が見て、心配しているので。嫌がっているので」
「・・・・・・・」 はあ?????
で、謝罪の言葉は、無いんですか?
「あ、・・・・・・・すいません」と、消え入りそうな小声。
キレた!
「馬鹿野郎! 先に、その一言を言うべきだろう!」
「・・・・・すいません・・・・」
あとは、説教。個人対、個人への、ウソは、まだいい。会長など、周囲の人まで巻き込んでしまったウソの積み重ねは、罪だよ。と。
まったくう・・・・・今の、ガキは。そう思いつつも、削除を決めた。
三瓶の、すすりなく声に、負けたわけでは、ない。
言うべき言葉の、順序を間違えると、人生の節目、節目で、予想だにしない方向へ走る・・・・ことは、しばしば、あること。
この顛末。これにて、幕を降ろします。ほとほと、疲れました・・・・
10日。15時まで、公開し、そして削除させて戴きます
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これにて、一件落着。そう、思っていた。
実際、8月12日。取材で、訪れたジムで、三瓶は、私がいることに気付き、ちゃんと謝罪の言葉を述べた。
確認した。
ちゃんと、会長には、話したよね? 私が、ウソを言ってました。迷惑をかけて、すいません、と話したよね?
「はい」
ほんとかなあ・・・・と、危惧感はあった。
というのも、その直後、会長から?があり、話したいことがある、とのこと。
なんだか、またまた、話しが、ねじれていきそうな雲行きだ。
選手が、一致団結して、会長に・・・・とか、この先、ジムや、ホール控え室では、あなたは出入り禁止・・・・になるのは、嫌でしょう? などと、半ば体の良い脅かしをかけてきたトレーナーは、今日は、わたしが、その選手にとって、嬉しく、感動したと話してくれた以外の、きびしく書かれたボクサーは、私を、気に入らないらしく・・・・
何ともはや自分たちが気に入らない記事や、記者に脅かしや、嫌がらせをして、日々、排除していこう、とするジムだったのか!?
また、裏切りか?
したたかに、・・・・静かに、また闘いが始まりそうな、気配・・・・
気が重い
そんな人ばかりだったのだろうか・・・
今後の動きは、すべて書いてくつもりだ。
ボクシングジムというのは、人間教育の場でもある。それが、ウソや、わがままなボクサーを野放しにしていってしまってる愚かな場に変わってきている
それで、いいのか?・・・・