スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

乱読三昧

2016年06月17日 | 雑感
平松 洋子著 『 野蛮な読書 』 (第28回講談社エッセイ賞受賞) を読んでみた。  

アジアを中心として世界各地を取材し、食文化と暮らし、文芸と作家をテーマに執筆活動する日本のエッセイストだ。

文芸・料理・映画・句集等と多岐にわたり、この本で紹介しているのはなんと103冊にものぼる。 

『 平松さんの指は手首のあたりのネジをまわしておけば、寝ているうちに指の本能で原稿が仕上がるのでは 』

 と嵐山光三郎氏が解説で語るように、とにかくその引き出しの膨大さと筆力には恐れ入る。

            

なかなか面白いこんなくだりがあった。 三浦哲郎著『忍ぶ川』を読み、人肌のぬくもりを初めて
読み知った、強烈な数行に出合ったという。


 「 雪国ではね、寝るとき、なんにも着ないんだよ。 生れたまんまで寝るんだ。
   その方が、寝巻なんか着るよりずっとあたたかいんだよ。」

 「 私は、はじめて、志乃を抱いた。」 
と続き、「乳房は、にぎると、手のひらにあまった 」

 と連なってゆくのだが、はぁ、世界にはこういう殺し文句があるのかと腰を抜かし、なにを思ったか
 布団のなかでこっそりパジャマを脱いでみたというではないか。

 脱いでみたのはいいが、いつまでもすうすうして寒いだけ、ふたたびパジャマを着直しボタンを留めた時の
 ばつの悪い気分、夜更けの暗い部屋のなかで顔を赤くした恥ずかしさを思い出し・・・・云々。


読書もここまでくると達人の域、絶妙の語り口だ。

103冊の中から、読みたいと思える本がまた見つかった。

山田風太郎 『あと千回の晩飯』 ・ 佐野洋子 『神も仏もありませぬ』 ・ 池部良 『風の食いもの』
・ 三浦哲郎 『じねんじょ』 ・ 哲学語録 『菜根譚』 ・・・ 等々。

さて、これらの本を頼りに、また暫くは生きていけそうな気がする。   乱読もまた良し。