スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

マネ・モネ・MONEY

2014年05月01日 | 雑感
フィリップ・フック著 『印象派はこうして世界を征服した』 という本を読んでみた。
著者は世界最大のオークション会社・サザビーズ社の美術部門シニアディレクター。国際的画商でも知られる人である。

印象派画家というと、マネ・モネ・ピサロ・シスレー・ルノワール等がいる。

 
         モネ『日の出』                       マネ『草上の昼食』       
題名からは印象派自体がいかにも世界を翻弄したかのようであるが、読んでいて実はその逆の気がした。
大国の一握りの富裕する者達が、そこに住む人々だけではなく美術・芸術までをも翻弄する。


フランスでアカデミーへの抵抗運動として生れた印象派。アメリカ初め富の増加に伴う巨額マネーが印象派へと向かう。
ドイツでは反ユダヤカードとして政治的に利用され没収破壊。その後国外(特に戦利品としてソ連)に流出。
イギリスではフランスとの確執は続いたが、1904年英仏和親協定調印後印象派への受容が一気に進む。

絵画までもが各国の富裕層・巨額マネー・政治的意図・戦争などの思惑で翻弄される様子が一目瞭然でした。

じゃ日本はどうなんだ、、、ってことですが、これがまた情けない。

1950年以降従来個人的な売買で画商がその売買行為を取り仕切っていたのですが、オークションが幅をきかせるようになると、価格は急上昇。日本は得意?な財テクに踊らされるようになっていく。

1987年ポスト印象派・ゴッホの『ひまわり』を2475ポンドで安田火災海上保険㈱(現損保ジャパン㈱)が落札。
1990年にはルノワール『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』を大昭和製紙会長・斎藤了英氏が7800万ドルにて落札等々。

 
    ルノワール『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』                ゴッホ『ひまわり』

絵画もお金を動かす道具として過熱していく。
当時過熱した不動産市場を抑えるため、日本政府は不動産価格を制御していた。

例えば印象派絵画を売りに出す時、不動産の売手に1000万ドルで売り、後日それを2000万ドルで買い戻す。
定価も無い価格も立証できない特徴を巧みに利用。不動産取引額を加重したり、政治家への賄賂を贈ったり。

(ちなみに斎藤了英氏は1995年賄賂で3年の懲役・執行猶予5年の有罪判決、1996年他界)

まさにこんな調子なのであった。 

世界二大オークション会社のサザビーズとクリスティーズ(共に発祥は英国)。
このサザビーズ・ジャパン代表の石坂泰章氏がその著書『サザビーズ』でこんなことを記していた。


日本には感性ビジネスは育たない。 受験で真っ先に捨てる科目は美術だとも。 
日本の教育はいかに情けないということか。
またホームパーティの文化のない日本にはコレクターは育たないともいう。
日本人は人に見せるを前提とせず、大半は宝物としてしまい込むのだそうです。

印象派絵画は明るくシンプルな色彩が特徴。 不安を和らげる力もあるといわれる。
それにしても一枚の絵に億単位の値がつく。 これも人間の成せるワザ。 

どう考えても人間は恐ろしい。  いや素晴らしいのか?