少林寺拳法 橋本西支部 道場通信
ドリーム No.631
発行日 2008年8月28日(木) 発行・文責 長坂 徳久
【聖拳夏夢・・全中2008①】
涙を流す少女たちの傍らでは、セミが鳴き続けていた。
本部。2008年8月24日。日曜日。午後12時30分。ついにこのときが来た。
第2回全国中学生少林寺拳法大会閉会式。成績発表の瞬間。一年越しの瞬間。
「女子団体演武の部 第1位・・」
聞いているものには、この1位のあとがものすごく長く感じられる。運命の一瞬だ。
「第1位・・ 東京都 富士見丘学園」
長坂はひとつ息を吐いた。
「第2位・・ 和歌山県・・」
そして、この和歌山県のあとの妙な時間と瞬間。和歌山からは橋本西支部と南部支部が出場している。去年のことがよみがえる。去年は同じ和歌山の葛城東支部に負けて2位だった。
今年はまったくわからない。ただ、厳しいとは思っていた。それほどの激戦だった。
日本一を目指してこの大会に挑んだ。勝つつもりで今までやってきた。
しかし、本選を見てからは、「今回は六位までに入ってくれていたらそれでいい。」
長坂ですらそう思った。
「第2位 和歌山県・・南部支部」
悔しくはなかった。でも、また一つ長坂は短く息を吐いた。
「第3位 和歌山県・・ 橋本西支部」
「はい・・」
リーダー・みなみの声。それは、あきらかに優勝できなかったショックの声。
長坂は大きく息を吐いた。安堵だった。
閉会式が終わった。それは同時に大会が終わったということ。
みなみが泣いている。長坂は、そっとみなみの肩を寄せた。
ゆりも泣き出した。タオルで顔を隠し、声を殺して泣いている。
りまも泣いていた。そして、1年生も・・。
みんなを集めた長坂も泣いていた。握手で健闘を称えた。
「いいか、今年は3位やけど・・・先生は悔しいとは思わない。悔しいと思う気持ち以 上に、お前らがよくがんばったという気持ちの方が、今回ははるかに大きい。今年のこれだけの激戦の中で、よく3位をとった。本当によくやった・・」
声になっていたかどうかはわからない。でも、みんながよりいっそう泣き出した。
保護者も泣いていた。
ゆりの母親がが、ゆりに言葉をかけている。長坂には聞こえなかったが、やさしい声だった。
りまの母親も、りまに声をかけた。
「初めて泣いたね・・。でも、りま、あんた、すごいよ。お母さん、今回ここへ来て、この大会を見て、本当にそう思った・・。」
みんなが泣いた。
少女たちは悔し涙。
でも、長坂と保護者には悔しいという気持ちは本当になかった。
ここまでよくがんばったという心からの拍手の音が、涙という形に変わっただけだった。
※全中2008を書いていきます。小説風に書きたいと思います。
※聖拳夏夢・・出場拳士でお揃いのTシャツを作った。そこへこの文字を刺繍した。