毎年恒例の「大阪私立中学校高等学校、芸文祭演劇部門公演」の一作だけど、これは結果的に金蘭の山本篤先生の引退公演になる。この最後を飾る作品が、金蘭座でも上演した『農業少女』だったのもうれしい。野田秀樹の名作を金蘭ならではのテイストに練り上げ自家薬籠中の物にした作品をもう一度新しいメンバーで再演する。古い作品が今の作品として甦る。いや、これは古典にはなろうとも古い作品なんかにはならない傑作だ。それを若 . . . 本文を読む
新人作家のデビュー作が続く。そこで描かれるのは未来の不安だ。もちろん不安なら誰しも抱えているだろう。こんな危うい日々の中で、先は見えないし。そして、不安とどう向き合うかは人それぞれだけど、彼らの姿を見て、それを通して見えてくるものに縋りたい。だからこの手の小説を読んでしまう。ある種の答えを求めている。それくらい僕だって不安なのだ。そして、もちろん作者も、であろう。
この小説の三兄 . . . 本文を読む
46回すばる文学賞受賞作品。なんでもない話なのに、魂を揺さぶられる。いや、そんな大袈裟なことではない。あまりにさりげなくて心が震える。ふたりの女性が同居して暮らす日々のスケッチだ。42歳と38歳。結婚はしないだろう。もう諦めた。いや、最初から男には興味がない。怖くて。同性愛ではない。趣味があう(同じアイドルグループの熱烈なファン同士)気の置けないふたりだ。お互い恋人が出来たらルームシェアを解消して . . . 本文を読む