習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ラストムービースター』

2020-03-20 11:07:38 | 映画
この映画が素晴らしい。自虐的な映画で、よくぞバート・レイノルズが引き受けたものだ、と驚く。でも、この映画は彼へのリスペクトに満ちている。描こうとすることの本質を見極めて、これを喜んで受け入れた彼は立派だ。そして、人生の最期にこの映画がある、という事実に驚く。遺作になるなんて、話が上手くできすぎている。 70年代から80年代にかけて一世を風靡したハリウッドを代表するスターが、この映画に主演する。8 . . . 本文を読む
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瀬尾まいこ『傑作は、まだ』

2020-03-20 10:37:46 | 映画
20年どころか25年以上、ずっと、誰とも関わらずにひとりで小説だけを書いて生きてきた男。そんな彼のところに、息子がやってくる。息子だけど、一度も会ったことはなかった。生まれる前から今日まで25年間。誕生から25歳までは毎月1回1枚ずつ写真が送られてきたから顔は知っている。この世に存在するという事はわかっていたけど、自分からは会おうともしなかった。養育費だけは毎月送っていただけ。そんな息子がいきなり . . . 本文を読む
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『野性の呼び声』

2020-03-20 08:44:14 | 映画
公開初日の2月28日に、たまたまこの映画を見ていた。でも、ここに書くのを忘れていた。『1917』を見るために仕事の帰り、劇場に行ったらちょうどこの映画が始まる時間で『1917』までのつなぎにちょうどよかったので(6時台に上映があるだろうと思って行ったのに8時からだった) 見たのだ。 ハリソン・フォード主演のアドベンチャー映画で予告編は何度も見ていたし、それなりには面白そうだったので、もしかしたら . . . 本文を読む
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『宮本から君へ』

2020-03-19 22:23:48 | 映画
2019年キネマ旬報ベストテン第3位になった作品だ。主演男優賞も受賞した。昨年を代表する1作なのだろう。ベストテンの作品で僕が唯一見てなかった映画だ。『ディストラクション・ベイビーズ』の真利子哲也監督作品だから、ある程度は想像していたけど、一応ラブストーリーみたいだし、前作のようなことはないだろうと、思ったが甘かった。予想を大きく越え暴力的な映画で、衝撃的だった。主人公だけでなく、出てくる人物がみ . . . 本文を読む
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プロジェクトKUTO-10『なにわ ひさ石 本店』

2020-03-12 20:57:50 | 演劇
これは大阪の懐石料亭の厨房を舞台にしたコメディー作品。それ以上でもなく、それ以下でもない。コメディーという枠にちゃんと収まる作品なのだ。ここに繰り広げられるお話は、なんでもない1日のお話だ。特別なことはないような、あるような。そんな微妙なお話なのだが、それで面白くなるのか、と言われると実に面白いのだ。 たわいもないコメディなのでもある。だけど、そのなんでもない出来事だけで、一本の芝居として、最後 . . . 本文を読む
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大阪劇団協議会プロデュース『白地に赤く日の丸とカッポウ着』

2020-03-11 22:24:50 | 演劇
これはなんと魅力的なお芝居だろうか。この芝居が見たかった。公演中止の報を受けた後、仕方ないから、先に貰っていた台本を読んだのだけど、そのあまりの面白さに驚く(作、くるみざわしん)。これは大阪の五劇団(劇団大阪、劇団息吹、劇団きづがわ、劇団せすん、劇団未来)が総力を挙げて送るはずの芝居だった。 台本から、この芝居を想像するだけで、ドキドキする。お話は実にシンプルなのに、深い。実に面白い作品なのだ。 . . . 本文を読む
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『ロングナイト・ジャーニー この夜の涯てへ』

2020-03-11 22:19:17 | 映画
こんな映画、今まで見たことがない。これは監督であるビー・ガンのわがままな夢の世界をそのまま実現しただけ。ナレーションが多くてお話の整合性もない。人と人との関係もよくわからない。そんなところも含めて夢の時間のような映画なのである。細かいところは気にせず、なんとなく目で追うだけでいい。そうするとどこかに連れて行かれる。それが何なのか、そこに託された意味とか、そんなことも気にせずともよい。だってこれは彼 . . . 本文を読む
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『ジュディ 虹の彼方に』

2020-03-11 22:13:42 | 映画
凄い映画だ。甘い映画を想像していたらこれは手痛い目に遭うことだろう。ジュディ・ガーランドの最後を描くこの映画はただの音楽映画ではない。ロンドンでの悪夢のような時間は彼女にとって最高の時間でもある。子どもたちと引き離されて、でも、彼女を求めてくれるお客さんの前で歌うことはある意味本望だろう。だけど、歌えない。怖い。酒に溺れ、不安と戦い、ステージに立つ。歌うことだけが生きること、なんていうようなお題目 . . . 本文を読む
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BALBOLABO『北向きのヴァルキュリヤ』

2020-03-07 09:10:20 | 演劇
  女子相撲の世界を描くのが今回の挑戦だ。オカモト國ヒコが「シンクロ」に続いて取り上げる。前回も大胆不敵な挑戦だったが今回はますますハードルを高くした。奇を衒った安易な二番煎じではないことは一目瞭然である。演劇でスポーツを描く。しかも、本格的に競技を取り込んで、舞台の上でそれをしっかりと見せきることを一番のポイントとする。視覚的にどうみせるか。演劇的リアルを追求するとどこに行き着くか。 . . . 本文を読む
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夏川草介『新章 神様のカルテ』

2020-03-07 09:02:52 | その他
3作と「0章」の計4冊の『神様のカルテ』は、ある種のメルヘンでもある。こで描かれることは理想論でしかないかもしれないけど、こんなにも堂々と語られると、そうだ、と思う。しかも医療現場のリアルな現状を踏まえて、主人公の医師がどういうふうにそこで生きるのかを、描いているから信用できる。なによりも主人公である栗原一止の飄々とした生き方は素敵だ。決してスーパーマンではないけど、こんな先生ばかりなら、素晴らし . . . 本文を読む
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『ミッドサマー』

2020-03-07 09:01:13 | 映画
こんなタイプのホラー映画は今までなかっただろう。白夜の北欧を舞台にして、90年に一度の村祭りという特別な時間が描かれるのだが、その華やかで明るい風景の中で,とんでもない恐怖が始まることになる。幸せそうな村人たちの笑い声から、それは始まり、繰り広げられることとなる。お花畑の少女たち、そこで無邪気に踊る姿、それがホラーになる。 普通なら恐怖と闇とは表裏一体のセットになっているはず。でも、ここでは恐怖 . . . 本文を読む
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『1917 命をかけた伝令』

2020-03-05 23:24:39 | 映画
確かに、これは噂通りの凄い映画だった。ワンシーン、ワンカットでの119分という大胆な試みはこの映画の描こうとしたことを実に的確に伝える。このとんでもなき緊張感はそこから生まれた。特に前半戦の緊張感は凄いものがある。狭い塹壕の中を途切れることなくカメラは主人公の2人を追いかけていく。その執念のようなカメラワークに圧倒される。後半に入ると、さすがにそれだけでは持たないけど、敢えて最後までその姿勢は貫く . . . 本文を読む
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㐧2劇場『フライング・チェック』

2020-03-05 23:15:07 | 演劇
ドラッグストアを舞台にしたコメディ。妊娠検査用具を大量に買いに来る謎の男を巡るお話だ。そこにパソコンの廃棄も絡めて描く。バカバカしい設定でしっかりと笑わせながら、そこから生命を巡る物語へと展開させていく。妊娠、出産から育児、成長。人間がたどるドラマを、生命の誕生から死までも視野に入れて90分で見せていく。シリアスとナンセンスのバランスがいい。それを軽いタッチのままで最後まで見せていくのもいい。 . . . 本文を読む
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森絵都『カザアナ』

2020-03-05 23:07:47 | その他
今、この瞬間に、この小説を読んだ、ということを大切にしよう。この小説が描こうとする危機感は今、僕らが直面している危機感と連鎖していく。3月2日から全国の小中高校が休校になった。この前代未聞の出来事に直面して、しかもこれは何の前触れもなく、いきなりの総理による要請である。学校に対しても一切の打診もなかった。この無謀な要請を受けて、各自治体は急きょ対応し、ほとんどの自治体は受け入れるしかない状況のなか . . . 本文を読む
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夏川草介『勿忘草の咲く町で』

2020-03-05 23:01:04 | その他
『神様のカルテ』シリーズのスピンオフのような作品。新任の研修医(ピカピカの1年目)と、若い看護師(3年目)の1年間を4つのエピソードで描く。とても気持ちのいい作品だ。読んでいて心洗われる。夏川草介のいつものワンパターンなのだけど、清涼剤のような小説で元気になれる。 地方の(というか、今回も信州)小規模病院を舞台にして,彼らが高齢者患者たちと向き合い、日々何をして、何を目指して生きているのかがしっ . . . 本文を読む
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