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映画・演劇のレビュー

プロジェクトKUTO-10『なにわ ひさ石 本店』

2020-03-12 20:57:50 | 演劇


これは大阪の懐石料亭の厨房を舞台にしたコメディー作品。それ以上でもなく、それ以下でもない。コメディーという枠にちゃんと収まる作品なのだ。ここに繰り広げられるお話は、なんでもない1日のお話だ。特別なことはないような、あるような。そんな微妙なお話なのだが、それで面白くなるのか、と言われると実に面白いのだ。

たわいもないコメディなのでもある。だけど、そのなんでもない出来事だけで、一本の芝居として、最後までやり通す。これは実は困難なことだ。どこかでメリハリを付け、シリアスにならなければ1本の芝居をキープしきれない。しかも、これはふざけたバカバカしい芝居ではない。とても真面目で、きちんとした芝居なのである。これは簡単そうに見えて実は大変なことなのだ。

これはチラシでも、当日パンフの中でも、作、演出の村角大洋が言っているように起承転結のしっかりした懐石料理のような芝居だ。それをパンフでは「懐石喜劇」と呼んでいる。最初から意図したわけではないようだけど、出来上がった作品はとてもきっちりとそういうものに仕上がっている。安心して見ていられる。

お話なんてどうでもいい、という姿勢がいい。だから、こんなささいなお話だけででも最後までちゃんと引っ張ることが出来る。仲居のしゃべる関西弁に「ん」が多い、というただそれだけのことを起点にして、最後まで笑わせながら芝居を綴っていく。だから最初にも書いたように、これはたわいもないお話なのだ。そんなことわかりきった上で、そこを貫いた。そして、それだけなのにお客さんに十分な満足を与えることが出来た。それって凄いことではないか。

この店の7人のスタッフ(キャスト)によるコンビネーションワークが素晴らしい。きちんと7人がそれぞれの個性を発揮して作品を支えている。特に一歩引いたところで,目立つことなくバイプレイヤーに徹する座長である工藤俊作が素晴らしい。そして、一番美味しいところを強面で演じた久保田浩もとてもいい。彼らだけでなく、全員が適材適所で、だからお話には頼らない、ストーリーでは見せない芝居を可能にした。起伏がない芝居なのに、そういうことが可能だったのは、役者の力だろう。そして役者を束ねた演出の力なのだ。彼らの日常のスケッチを見ているだけで楽しい。そんな芝居を実現した。これなら「シリーズもの」にもできる。(もちろん、しないだろうけど)


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