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映画・演劇のレビュー

『秋深き』

2013-09-17 22:19:11 | 映画
 池田敏春監督の遺作。2008年作品。彼は2011年に代表作である『人魚伝説』のロケ現場で自殺した。素晴らしい映画監督だった。生涯自分の撮りたい映画を撮れないまま、悩み苦しんで、それでも誠実な作品を作り続けた。この文芸映画が彼のやりたかった作品だとは思えない。では、何を彼はしたかったのか。僕にはわからない。デビュー作から、この遺作までほぼすべての映画を見てきたけど、そこには彼の望むものが明確に刻印 . . . 本文を読む
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中村航『夏休み』、石田衣良の『1ポンドの悲しみ』

2013-09-17 22:17:12 | その他
 ナチイチ・シリーズである。文庫本は持ち運びが便利なので、癖になる。しかも特製ブックカバーがなかなか持ちがいいから、やめられない。実はもうこの小説に続いて、石田衣良の『1ポンドの悲しみ』という恋愛短編集も読んだ。  この2冊を読みながら、もうしばらくは恋愛小説はいいな、と思った。おなかいっぱいだ。しかも、自分がもう恋愛なんかとは縁のない人生を送っているから、共感できないのもきつい。いや、問題はそ . . . 本文を読む
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『東京オアシス』

2013-09-17 22:10:01 | 映画
 これは『かもめ食堂』から始まった小林聡美を主人公にして、日常の些細なことを中心に据えた映画シリーズの最新作なのだが、今回は今までと少し違う。それは、ここには彼女たちが集う共通の居場所がないのだ。この連作のいつものパターンは、どこかに彼女たちが集まってくることから生じるドラマというスタイルだった。だが、今回は彼女を中心にして、みんながばらばらで、都会を放浪するばかりだ。でも、タイトルが指し示すよう . . . 本文を読む
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『サイド・エフェクト』

2013-09-16 17:24:12 | 映画
 スティーブン・ソダバーグ監督がこの作品を最後に映画監督から引退するらしい。まだ、50歳という若さなのに、なぜ引退? と思う。で、これからは活動の拠点をTVドラマに移すそうなのだ。  『セックスと嘘とビデオテープ』からキャリアをスタートさせ、『エリン・ブロコビッチ』を経て『トラフィック』で社会派映画の巨匠へ。しかも、快進撃は続く。アート系映画を作るマイナーな監督という印象を覆す『オーシャンズ11 . . . 本文を読む
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『雲のむこう、約束の場所』

2013-09-16 16:35:08 | 映画
 新海誠監督の劇場用長編映画デビュー作。今まで見逃していて、ようやく見た。先日の『言の葉の庭』があまりに素晴らしかったので、旧作を見るのが少し怖かったけど、新作を見れるのはきっと数年後だから、今、まだ見ていない映画のストックがあるのなら、やっぱり見ておこうと思い、勇気を出してレンタルしてきた。  さすがにまだ、これは作品としては拙い。でも、がっかりはしない。ここには彼の好きなものがすべて詰まって . . . 本文を読む
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『キャプテンハーロック』

2013-09-13 21:24:40 | 映画
 3Dアニメーション超大作だ。東映アニメーションが総力を結集して送るスペクタクルロマン、のはずだったのだが、どうしてこんなことになったのだろうか。冒頭の字幕での説明部分からなんか、しょぼくて、驚く。そこにはロマンのかけらもない。あそこは絶対にナレーションで処理するべきなのだ。あの字幕を読みながら、なんだかこれからダイジェストを見せられる気分にさせられた。壮大なドラマなのだから、それなりの処理が必要 . . . 本文を読む
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藤野可織『爪と目』

2013-09-13 21:10:15 | その他
本年度の芥川賞受賞作品。直木賞の『ホテルローヤル』に続いて読んだのだが、こちらはつまらない。まぁ、それはいつものことだ。芥川賞受賞作品のつまらなさは、もう誰もがわかっていることだろう。なんとなく、気取っていて、わかりづらくて、何がいいたいのやら、よくわからなないまま、終わり、読者をけむに巻く。 でもこれは、最初はそれなりに結構おもしろかったのだが、結末部分に納得がいかない。あれでは、無理やり . . . 本文を読む
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桜木 紫乃『ホテルローヤル』

2013-09-13 21:03:58 | その他
 ある廃墟となったラブホテルの来歴を短編連作のスタイルで断片的に語る。主人公はそれぞれ全くの別人で、だが、彼らがそれぞれ、どこかでこのホテルとかかわる。時間軸も前後して、自由奔放。規則性なんかどこにもない。一応遡行する形にはなっているけど、あまり気にすることはない。これは独立した短編集として、味わうほうがいいかもしれない。いずれの話も、なんだか侘しい話ばかりで、疲れた男女が登場する。だが、そこにほ . . . 本文を読む
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『マン・オブ・スティール』

2013-09-10 22:26:23 | 映画
 この夏のビッグ・ムービー、その最後を飾る『スーパーマン』の新作の登場だ。こんなにも続々と大作映画が並ぶ夏も珍しい。しかも、製作費が100億とか200億とか、もう想像もつかないビッグ・バジェットが並ぶ。そんな中にあっては、日本映画の『ガッチャマン』なんて吹き飛んでしまって当然だろう。公開する時期が悪すぎたのだ。同じようなライバルが並ぶこの時期に登場してハリウッド大作に勝つためには、もっといろんな仕 . . . 本文を読む
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RandomEncount 『Garden』

2013-09-10 22:24:45 | 演劇
 扱うテーマは面白いし、興味深いのだが、描き方があまりに単純すぎて、底が浅い。ミステリ仕立てで、どこに話が向かうのか、わかりにくいのも悪くはない。ちゃんと話に引き込まれるから。だが、いかんせん緊張感がなさすぎ。演出が単調だし、(それはフラットな照明、音響の指示も含めて)この種の芝居に必要な「はったり」がまるでない。この手の芝居には、不安を煽りつつ、いろんなところにミスリードしていきつつも、やがて核 . . . 本文を読む
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オリゴ党『ヤバカワイー』

2013-09-10 22:22:50 | 映画
 作品世界が思ったようには広がらないで、反対に閉じていく。設定された話以上のものがここにはないのだ。これはきっとおもしろい話のはずなのに、そうはならないのはなぜだろうか?  そこが今回の一番の問題点だろう。  これもまた、いつもの岩橋ワールドなのだが、今回はあまり乗れなかった。その理由は先に書いたとおりだ。ただ、それだけなのだが、それはかなり、大きな要因となるだろう。結構微妙である。今回、女たち . . . 本文を読む
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プラズマみかん『わんころと揺れ雲をめぐる冒険』

2013-09-10 22:17:07 | 演劇
 2年前の『わんころが揺れ雲をめぐる冒険』の続編。この微妙なタイトルの差異。中島悠紀子さんは再演でも、続編でもないもうひとつの『わんころ』の物語を目指す。今回は前作で描けなかったその先を描く。進化した『わんころ』の行き着く先はどこにあるのか。  阪神大震災を描く。あの頃少女だった中島さんにとって、あれはいったい何だったのか?まずそこから始まる。神戸にいながら被災したわけではない。自分たちの周辺は . . . 本文を読む
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関口尚『ナツイロ』

2013-09-10 22:15:27 | その他
 集英社文庫のオリジナル作品。2012年の夏に出版されて今年の「ナチイチ」の1冊にも選ばれている。今回うちの学校でナチイチの本を大量に購入したから、その中から、まだ読んでないし、少し興味深い作品をピックアップして読んでいる。これで5冊目。普段は文庫は読まないのだが、久しぶりに文庫で読むと、楽。かばんが重くならないから持ち運ぶが便利だし。でも、新作を中心にして読書しているからなかなかそうはうまくいか . . . 本文を読む
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『江ノ島プリズム』

2013-09-08 20:38:07 | 映画
 『時をかける少女』の少年版。こういうジュブナイルを今の時代によみがえらせて見せてくれるのがうれしい。上映時間が90分というのもなんだか懐かしい。今の映画はすぐに引きのばしてしまうけど、昔の映画はちゃんと90分で終わるように作られてあった。(2本立上映だったこともあるけど)無意味に長くする傾向に反発するように、これはドンピシャ90分なのだ。もっと見たいけど、と思わせるくらいのところで止める。なんだ . . . 本文を読む
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中島京子『平成大家族』

2013-09-08 20:34:48 | その他
 文庫本で読んだ。ハードカバーで出た時に読んでいるのではないか、と不安だったけどしばらく読んでみて、これは初めてだ、とわかりほっとする。最近、そういうパターンが時々あるから、恥ずかしい。読んで数年経つと読んだことすら忘れる本が多いのだ。ちゃんとタイトルを覚えてないからそうなる。しかも、文庫とハードカバーでは装丁が違うし、時にはタイトルすら変わることもある。もちろん内容も再構成されていたりして、オリ . . . 本文を読む
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