習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『雷桜』

2010-11-17 21:14:58 | 映画
 時代劇版『ロミオとジュリエット』というキャッチフレーズに惹かれた。それを巨匠、廣木隆一!がいかに仕上げるか、興味津々ではないか。ただの恋愛物には収まらない映画のはずだ。そこに期待しないではいられない。何が飛び出してくるかも、まるで想像もつかないから、ドキドキした。規格外の破天荒な映画の予感。だが、残念ながら、その期待は反対の方向に向かう。  いくらなんでもこれはあんまりだ、と思う。時代劇として . . . 本文を読む
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『ミー・マイ・セルフ』

2010-11-17 20:49:25 | 映画
 ご都合主義のコメディータッチで、ミステリー仕立てのラブストーリーか、と思いきや、後半なんとも奇妙な展開になる。だが、「おかま」ものは、タイ映画の得意技なので、これはそんなにも特別な話ではないのかもしれない。だが、それにしてもへんてこな映画だ。僕たち日本人の感性では太刀打ちできない。  お国柄が出るとでもいうのか。同じ日に見た『メモリー 僕たちの居場所』も、あれはとても普通のラブストーリーとは言 . . . 本文を読む
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小路幸也『東京バンドワゴン オール・マイ・ラビング』

2010-11-17 20:45:30 | 映画
とうとうこれで5冊目。堀田家のいつもの面々によるホームドラマだ。どんどん家族の輪が広がっていき、だんだん収拾がつかないことになってきた。でも、このたくさんのメンバーを大事にしなくてはこのシリーズは成り立たない。ひとりひとりをきちんと立てて彼らの持ち味を大事にし、更に新しい人々をその家族の輪に巻き込んでゆき増殖する。本の帯にも書いてあるように、「堀田家のこどもになりたい」とみんなが望むような、そん . . . 本文を読む
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『キス&キル』

2010-11-17 20:44:20 | 映画
『キューティ・ブロンド』のロバート・ルケティック監督が次世代のロマ・コメの女王、キャサリン・ハイグルと、アシュトン・カッチャーを主演に迎え贈るアクション・ラブ・コメディー。先に公開されたトム・クルーズとキャメロン・ディアス主演の『ナイト&デイ』の「ぱちもん」みたいな映画だ。ただこちらはあくまでもコメディーが中心なので、『ナイト&デイ』と較べるとアクションシーンは少ないし、迫力もない。この映画にそ . . . 本文を読む
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『カールじいさんの空飛ぶ家』

2010-11-14 20:28:44 | 映画
 今年お正月映画として公開されたディズニーの(と、いうか厳密に言えば、ピクサーなのだが)アニメーション映画。老人を主人公にしたアニメなんて興行的にどうか、と思ったが、それなりにヒットしたようだ。ハートウォーミングな世界を期待したのだが、思いがけない展開を見せる。要するに冒険ものなのである。子どもたちも取り込もうとすればこういう展開しかないか、とも思うが、なんだか派手なアクションとこの映画のパッケー . . . 本文を読む
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『メモリー ~君といた場所~』

2010-11-13 22:58:26 | 映画
 08年に公開された《タイ式シネマパラダイス》での上映作品から2本、見た。傑作『シチズン・ドッグ』を見た当座は、さすがにその他の映画にまでは気分がいかなかったが、ようやく余裕も出てきて改めて他の映画も見たくなった。大体たった4本しかリリースされてないのだから、一応見ておきたいと思い、発売から10カ月経つが、ようやく見た。2本とも驚きの映画だったが、まず最初は06年作品のこちらから。  見る前は、 . . . 本文を読む
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綿矢りさ『勝手にふるえてろ』

2010-11-12 20:55:34 | その他
 かなり軽いタッチの作品で、前作(『夢を与える』)の重さとは対照的。3年に1本くらいのペースで今の自分の気持ちを小説として提示していく綿矢りさの第4作であり最新作。  26歳(作者と同じ年齢)のOLの想いを綴った小品である。イチとニ(もちろんこれらは便宜上のネーミングだ)という2人の男の間で揺れる女心が描かれていくのだが、主人公は年齢的にはもういい歳した大人のはずなのに、まるで少女のままで、14 . . . 本文を読む
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佐藤岳『中澤佑二 不屈』

2010-11-12 20:54:40 | その他
 なんとなく、時間調整から読み始めた。中澤は今回のワールドカップの結果をどう捉えているのか、という興味程度からだ。安易なよくあるような人物伝なら、すぐに読むのを辞めるつもりだったが、これがなかなか面白く、結局最後まで読んでしまった。  お話は3章から成る。彼がJリーガーになるまで。ドイツワールドカップ、そして、今回の南アフリカ大会。まぁ、オーソドックスな構成である。彼がいかに凄い選手なのか、なん . . . 本文を読む
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劇団タノシイ『見守りたいぜ』

2010-11-12 20:53:12 | 演劇
 松竹芸能の若手グループによる集団「劇団タノシイ」を始めて見た。第9回公演ということで、なかなか手慣れた感じでそれなりには安心して見てはいられた。だが、稽古不足なので、綻びは多く、しかも、それをあまり大事には思っていないようで、アドリブ重視の姿勢も、これを一応「芝居」なのだと考えると、なんとももどかしい。芸人さんがやっているので、どうしてもそのへんの認識が甘くなるのではないか。本人たちが「これはコ . . . 本文を読む
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『マイレージ、マイライフ』

2010-11-12 20:51:52 | 映画
 『ジュノ』の監督最新作、ということで、借りてきた。これもまた、劇場公開時に見逃した1篇だ。旅から旅を繰り返す男が主人公(ジョージ・クルーニー)。仕事でアメリカ中を1年中駆け回る。彼は、職場で不要になった人間に対して首を勧告することを代行する仕事だ。出来るだけ傷つかないように、本人の気持ちを汲んで話をする。だが、傷つかないように、なんて不可能だ。いきなり見ず知らずの人から、もう仕事に来なくてもいい . . . 本文を読む
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安東みきえ『呼んでみただけ』

2010-11-12 20:50:19 | その他
 母と息子の時間が描かれる。7つのお話を間に挟んで幼い男の子が母親の作る物語に耳を傾ける姿が綴られていく。彼らの日々の生活を描きながらそこに、お話が挟み込まれていく。2つはほぼ平行に同じ比重で描かれていく。お話の中にある教訓はあまり大事ではない、と僕は思う。だが、そこに込められた母親からのメッセージは彼女にとっては大事なのだろう。でも、少年にとってはあまり意味をなさない。彼は面白ければそれでいい。 . . . 本文を読む
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青山七恵『さよならの音』

2010-11-12 20:49:10 | その他
6話からなる短編集。いつもながら、彼女の書く「なんでもない日常」はおもしろい。こんなにもなんでもないスケッチなのに、読んでいてドキドキさせられるのだ。特別なドラマなんて、まるでない。あまりに何もなさ過ぎて、退屈しそうになるほどだ。でも、もちろん退屈なんか、するわけがない。ここにある緊張感が心地よいのだ。  たとえば、一番最初の話である『新しいビルディング』。たった2人しかいない職場のとある部署 . . . 本文を読む
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『月に囚われた男』

2010-11-08 23:32:49 | 映画
 この新人作家によるSF映画は、手垢のついた題材で、何の目新しさもない。しかも、月面のシーンはミニチュアで、なんだかしょぼい。低予算のSF大作はどうしてもこうなるのだろう。もしかしたら、わざとこういう効果を狙っているのかもしれないが。登場人物はたったひとり、というところも含めて『サイレント・ランニング』に似てる。最初のCMは『ターミネーター』や『スターシップ・トゥルーパーズ』とか、で散々やられてき . . . 本文を読む
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川上弘美『パスタマシーンの幽霊』

2010-11-08 22:30:02 | その他
 この短編集はとてもおもしろい。川上さんらしい作品で、なんだか暖かい気分にさせられる。22編の短編は時々リンクするエピソードもある。もっと読みたかったから、再び出会えてうれしい、と思ったりする。でも、3度目はない。あまり欲張らない方がいい、ということだろうか。いずれもたいした話ではない。なんてことないことがなんとも言えない魅力だ。以前読んだ『神様』に似ている。こういうタイプの作品はもっとあったよう . . . 本文を読む
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A級MissingLink 『蒼天、神を殺すにはいい日だ』

2010-11-08 22:08:31 | 演劇
神を殺す話だったのに、なぜか神を助ける話になってしまっている。それってどうよ、と一瞬思ったが、きっとどちらも同じようなものなのだろう。殺すも、生かすも紙一重のことで、トライアウトの段階では、「神を殺す」ことからスタートした衝撃的なドラマだったこの作品が、最終的にはこういう形に収まってしまい、曖昧だったいくつものイメージが、けっこうすっきりとまとまってしまったのは、土橋さんの中で整理がついたから、 . . . 本文を読む
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