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習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『この木戸を通って』

2009-02-16 20:22:53 | 映画
 市川崑監督の幻の作品が15年の歳月を経てついに公開された。これはもともとフジテレビがハイビジョンの試作品として製作した作品で、TV放映後、お蔵入りしていたものだが、それがとうとう劇場公開されたのだ。うれしい。  これはもしかしたらこれは『竹取物語』や『つる』を作っていた頃の作品だろうか。そんなことを思いながら見た。ここにはあの2作品に通底するイメージがある。もちろん作品としては、こちらのほうが . . . 本文を読む
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『胡同の理髪師』

2009-02-16 19:21:38 | 映画
 モンゴル人の監督ハスチョローは、対象に対してきちんとした距離感を保って見せる。北京が舞台である。この町を外から見れるスタンスがこの映画には必要だった。この映画に必要なのは、なくなりゆく胡同への郷愁ではないからだ。  主役のチン老人は実在の理髪師で、この映画は彼のセミ・ドキュメンタリーのようにも見える。だが実際は完全な劇映画である。このリアルさはドキュメンタリーでは描けない。  3年前北京に行 . . . 本文を読む
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『かぞくのひけつ』

2009-02-15 00:25:57 | 映画
 第7芸術劇場が製作した映画。しかも昨年の監督協会新人賞を小林聖太郎監督は受賞してる。すごい。大阪ローカルな映画でそれだけ高い評価を受けたのはなんだか嬉しい。昨年ナナゲイに行った時、ちょうどこの映画が上映されていたのだが見なかった。その時は他の映画を見た。なんだかべたな映画ぽっくて、見たいとは思わなかったのだ。  ようやくDVDになったので見る決心がついた。そして、正直言うとつまらなかった。これ . . . 本文を読む
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『ボーイ・ミーツ・プサン』

2009-02-14 23:53:57 | 映画
 プサンに行った時、見た風景とか感じたこととか、いろんなことを思い出した。日本にこんなにも近い外国である。近いからこそ、その違いが明確に感じられることも多い。僕はソウル以上にプサンのほうが好きだ。  柄本祐が観光ビデオを撮影するため単身プサンに乗り込む。と、いうか、いきなり「明日から言って来い」と言われて、船でプサンに乗り込み、3泊4日。なんだかいいかげんな取材で、ただカメラを抱えて町をふらふら . . . 本文を読む
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『ミラクル7号』

2009-02-14 23:31:26 | 映画
 チャウ・シンチーが『カンフー・ハッスル』に続いて取り組む新作だ。子供と父親の話にぬいぐるみタイプのETを絡めた人情もの。正直言ってたいした映画ではない。期待して見た人はがっかりするだろう。現に僕は凄くがっかりした。だが、かってのチャウ・シンチーはこの作品の比ではないすさまじくつまらない映画を散々撮ってきた。香港映画においてそんなことは当然のことなのだ。  最近でこそこんなふうに1本1本が大切に . . . 本文を読む
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重松清『とんび』

2009-02-14 23:01:47 | その他
 またこういう小説を書く。重松清はいつも同じだ。同じものを延々と書く。だがそれはマンネリになることはない。なぜなら彼の中でこの同じ話は永遠に今の彼にとっての最重要課題だからだ。繰り返し繰り返し彼は自分と家族のことを書く。  今回は父と息子の成長の物語だ。昭和30年代の終わりから平成までを背景に子供の誕生から、彼が妻子を作り独立していくまでをじっくり描く。妻の死後、男手ひとつで旭(男の子が生まれた . . . 本文を読む
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堀江敏幸『未見坂』

2009-02-14 18:34:27 | その他
 ここに収録された短編小説はひとつひとつ完全に独立したものだ。しかし、その底に流れる寂しさは共通している。寡黙な文体は時には必要なことすら隠すようで読み終えたときには描かれた世界のありさまが明確な輪郭すら残さないときもある。  母と息子の2人きりの時間を描く『滑走路』から始まり息子がおじさんと2人で山に行く話まで(『おじさんのトンネル』)まで、ここに収録された短編7編はいずれも登場人物が2,3人 . . . 本文を読む
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『ルオマの初恋』

2009-02-14 18:15:48 | 映画
 何もない。話らしい話はないということだ。雲南の少数民族ハニ族の少女ルオマを主人公にする。彼女は毎日町にとうもろこしを売りに行く。1本が5角だ。1日座っていても何本売れるのかは知れない。だが、たいした収入にはならないことだけは明白だ。  カメラマンの男が写真のモデルにならないかと誘う。モデルといっても彼女と棚田を背景にしてカメラに収まるだけだ。写真を撮るごとに観光客から10元(とうもろこし20本 . . . 本文を読む
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『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

2009-02-14 17:31:08 | 映画
 3時間に及ぶ大作だ。奇妙な運命のもと生まれたひとりの男の生涯を追いかけた。彼は老人の状態で生まれてきて、赤ちゃんになっていく。普通の人間の逆を行く。誕生時は80歳くらいの状態。徐々に若くなる。そして消えていく。  映画はそんな不思議を描く。だが、ベンジャミンの人生はそれ以外に特別なことはない。(まぁ、これ以上の特別はないが)映画は彼の生い立ちから死までを静かに描く。普通の人の人生と同じくらいに . . . 本文を読む
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桐野夏生『東京島』

2009-02-10 23:26:15 | その他
 無人島に漂着した男女、というのを描いた作品は今までもたくさんある。だが、そこに、さらに20人以上の男が流れ着く。男女比は31対1! これはおぞましい。そう、この小説はおぞましすぎる。だから読むのがつらかった。ノンストップ・サバイバル・ノベルらしい。想像を絶する話が展開していく。だが、この状況なら充分ありえる。それだけになんとも言い難い。予想通りの展開となる。グロテスクだ。だが、しかたない。   . . . 本文を読む
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『オーストラリア』

2009-02-10 00:37:27 | 映画
 3時間に及ぶ超大作だ。堪能させられる。それにしてもこういうハーレクイン・ロマンが今作られるのはなぜなのか。気になる。『風と共に去りぬ』のような大河ロマンである。現代の映画とはとても思えない。だが、敢えてこれだけのリスクを犯しても今こういう映画を世に問いたいと思ったバズ・ラーマン監督、ニコール・キッドマン+ヒュー・ジャックマン以下この映画に関わった膨大なスタッフ、キャストに敬意を表したい。これを映 . . . 本文を読む
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ダンスの時間vol.21

2009-02-10 00:06:14 | 演劇
 ダンスという表現はとてもあやういものだなぁ、と改めて認識させられた。強烈なインパクトで突きつけてくる表現でもあるが、さらりとしたタッチで表現されたものはその微妙なものをしっかり受け止められなくては、するりとすり抜けていく。今見たものがその瞬間零れてしまうこともある。  だけど作り手はそんなきわどいものを伝えたくて、提示する。かすかな息使い。震えるような動き。それに目を凝らさなくてはならない。見 . . . 本文を読む
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. 真夏の會『エダニク』

2009-02-09 22:49:30 | 演劇
 場の休憩室を舞台にして、紛失した牛の脳髄を巡るミステリ仕立ての劇。閉ざされた空間。ここにやってきた部外者の男。ここの2人の職員。彼らの現状が語られる。牛や豚を捌くという行為。この仕事に対する世間の目。30歳までニートをしていた男と、20歳そこそこで結婚し生活に追われてきた男。同世代の2人の出会い。彼らのなんでもないやりとりが緊張感を増幅する。彼らを包み込む今という時代の気分がしっかり描かれて . . . 本文を読む
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劇想からまわりえっちゃん『青春爆貫WILD NAME』

2009-02-09 22:09:53 | 演劇
 フライヤーを見た時、この人たちはほんとにバカだなぁ、と思った。こういうセンスってなかなか出来ない。自分を棄ててる。捨て身だ。こんなフライヤ-を作るし、劇団名はこれだし、きっと凄まじくつまらないか、すばらしいか、そのどちらかしかないだろう、と思った。見なくてはならない、と勝手に使命感に燃えて劇場へ。  予想を上回るバカだった。呆れるしかない。よくぞこんな芝居をでっち上げたものだ。凄すぎる。やはり . . . 本文を読む
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『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』

2009-02-09 21:24:05 | 映画
 『パンズ・ラビリンス』の成功を受けて、再びギレルモ・デル・トロが本来のフィールドに戻ってきて好き勝手の限りを尽くす最新作である。よくぞここまでやってくれた。どんなことでも極めるというのは凄い。ちょっとアート系の映画で成功したらもうバカな映画には戻らないし、かっての自分の仕事を反故にしたいと思うような輩もいるが、デル・トロはそんな奴らとは違う。彼は筋金入りの超オタクだ。だいたいいつものタッチは抑え . . . 本文を読む
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