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映画・演劇のレビュー

『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第2章』

2016-02-27 10:38:21 | 映画

『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』の続編。インドの高級リゾートホテル(でも、今はまだ、おんぼろ)を舞台にして人生の最終章を優雅に過ごそうとするイギリス人たちが、なんのなんの余生ではなくここから人生をスタートさせるという、老人を元気にさせる映画。最近、映画のターゲットは若い女性層から、老人にシフトチェンジしているから、この手の映画が増えてくる。しかも、こういう映画がちゃんとヒットするから、量産されることになる。今はまだそれども少ないからレベルは落ちないけど、そのうち、乱造され、つまらないものも生まれてくるかもしれないけど、それはそれで面白い。

 

この映画の魅力は老人に媚びるのではなく、年齢に関係なく、誰が見ても面白い映画になっていることだ。そんなのジョン・マッテン監督作品(『恋に落ちたシェイクスピア』が有名)なのだから当然の話なのだが、それでも、この極端なドラマはかなり難しいところをなんなくクリアしているように見せる。さすがだ。主人公をホテルのオーナーである青年に設定したのがいい。しかも彼を狂言回しにするのではなく、群像劇の要として描いたのがうまい。

 

マギー・スミス演じる老夫人と、デプ・パテルの若者のアメリカ珍道中を導入部にしてお話は軽快に進む。インドに戻ってきて、そこからが本題になるのだが、シチュエーション・コメディーのスタイルも援用し、(リチャード・ギアの謎の男を巡るドタバタ騒動)、70代、80代になろうとも、恋に仕事に冒険に全力で挑む男女の姿が描かれる。もちろん、それがわざとらしくはならない。とても真摯で誠実。しかも、当然もう若くないということも知っている。それでも、老いて諦めるのではなく、輝いている。だから、若い人たちも彼らを見習い頑張ろうと思う。そういう図式を無理なく提示するのである。

 

ソニー(デプ・パナル)の婚約パーティーをスタートにして、結婚式に至るまでのドラマとして全体をまとめた。章立てをして、そこにこのホテルの住人たちのそれぞれのドラマを絡ませて見せていく。インドの街並み、豪華なパーティー。見事な寺院や建築。ロケーションを生かした華やかで魅力的な風景、描写。夜のシーンと昼のシーンの対比も見事。結果的に静かなシーンが際立つことになるのもすばらしい。インド映画の躁状態のつるべ打ちは疲れることが多い(3時間とかそれをされると、僕たちには無理)のだが、このイギリス映画は、ちゃんとそんなことをわかった上で、インド映画テイストを巧く織り込む。やりたい放題の祝祭的空間が、こんなにもしっとり嵌る。うるさくないし、共感させられる。見ていて元気になる。これを見ると、明日も、これからも、ずっと頑張れる。


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