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映画・演劇のレビュー

『インモータルズ 神々の戦い』

2011-11-14 22:00:12 | 映画
これは凄い予算を投入した超大作だ。これだけのビジュアルを作るためには、いくらCGでなんでも出来る時代になったからと言っても、それなりには湯水のようなお金が必要だろう。『セル』『落下の王国』に続くターセム監督の美意識が全編を彩るアート映画。これは娯楽アクション大作映画を期待した観客を見事に裏切る。だいたい何が描かれているのか、それすらわからない人も多いのではないか。スペクタクルであることは認める。でも、こういう勝手な自分の耽美的な世界で酔われても、観客は納得しないだろう。それは『落下の王国』と同じだ。だが、あれは世界の不思議な場所を見せるという風景映画だったからまだましだった。今回は一応娯楽大作なのだから、そのへんのルールくらいは守ってもらいたい。血湧き肉躍る活劇というスタイルをここまで裏切るなんて、普通じゃない。公開2日目の土曜なのに、興業は最初から諦めて、100席ほどの小さな劇場しか用意されてない。

 でも、僕は最初からここに娯楽活劇なんか、期待してないから、この裏切り行為に、心地よさすら感じた。ターセムらしい妥協のなさだ。彼はどんな映画でも自分を変えない。人間たちの愚かな戦いを見守る神々の姿を描きながら、彼らもまた人間たちと同じでタイタンの復活によって下界で戦うことになるのだが、なんだ、同じじゃないか、という結末。やられたら神々も死ぬ。まぁ、あたりまえか。ターセムはそんなことには興味がない。ため息が出るように美しい風景を作るだけだ。彼の美学を展開するだけ。

 お話なんかには興味ない。復讐の物語とか神に人間界の未来を託された青年の成長物語とか、一応そんなルックスはあるのだが、そこから想像されたような話の展開はない。残酷なシーンは満載しているけど、それすらアートしている。ギリシャ神話には興味ないし、アホな神々にも、ミッキー・ロークの暴力シーンもどうでもいいけど、ただ美しい映画を作ろうとしたターセムのわがままは、おもしろい。それだけで満足した。一応だけど。

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