よしながふみの原作コミックを読んだときは軽い衝撃を受けた。こんな手があったんだ、と感心したのだ。それはちょっとした驚きだった。男女逆転の世界というのは『猿の惑星』級の発想のおもしろさだ。それを、それだけに終わらせない。きちんとそこから考えられるリアルなドラマを見事展開して見せた。
この原作を持ってくるだけでこの映画の成功は約束されたと言っても過言ではあるまい。まぁ、現実はそんな簡単なものではない。発想だけでは2時間の映画は引っ張れない。第1級のエンタテインメントに仕立てるためには、恐るべきお金が必要だ。これをちゃちな映画にしたなら、ただのお笑いにしかならない。見る前はどうせ中途半端な代物だろうと高をくくっていた。だが、出来上がった映画は予想を大きく反した佳作である。傑作とはいくら何でも言わないが、これだけ健闘していたなら僕は満足だ。
ディテールを丁寧に見せていくことで、このストーリーおもしろさにリアリティーを与えることに成功した。TV出身で『木更津キャッツアイ』の金子文紀監督作品なので、まるで期待はしなかったがこういう誤算はうれしい。中途半端にお話の面白さのみに依拠した映画なら最悪になったはずだ。金子監督は淡々と事実を追いかける。主人公である水野の目線から、基本的にはすべてを見せるのもいい。(満を持して吉宗が登場するシーンは、あれでいい)彼の目に見える事だけをきちんと描く。
彼が吉宗と出会い、一瞬心を通わせ、別れていく。2人は住む世界が違う人間だから、それ以上関わりは持たない。この潔さがこの映画を気持ちのよいものにした。水野を演じる二宮和也は貧弱すぎて、美男子にはほど遠いが、芝居は上手いのでなんとか許せる範囲内だ。それより何より将軍吉宗を演じた柴崎コウがいい。凛とした佇まいで女将軍を見事に演じて見せる。登場シーンは少ないが、彼女がこの映画を支えた。彼女の存在抜きでこの映画は成立しない。彼女をぶれない女として、描かれるのがいい。だから、甘いだけの映画にはならない。彼女は将軍として、江戸幕府を再建しようとする。その部分は残念ながら2度ほどセリフで語られるだけで実際には描かれないが、それはしかたないことだ。これはあくまでも大奥の話だからだ。必要以上に話を広げないのがいい。映画として、とてもバランスがいいのだ。
所詮エンタメなので、まず娯楽映画として、おもしろくなくてはならない。この映画を通して何かを告発するとか、そういうことは一切ない。見せ物としておもしろければいい。しかし、作り手が舐めた作り方をしたなら、それすら不可能になる。というか、それってとても難しいことなのだ。覚悟してかからなくてはならない。金子監督以下スタッフは妥協しない。つまらないTV時代劇のような手抜きはない。細部まで豪華に見せる。きちんとこの世界を造型し、そのなかで、閉ざされた世界である大奥を絢爛豪華に見せる。
だから、ラストの甘さは許せることになる。あれはエンタメとしての王道だろう。カタルシスがある。時代劇だが、まるで現代劇に様な映画だ。際物だが、そんなことは承知の上で堂々としている。
この原作を持ってくるだけでこの映画の成功は約束されたと言っても過言ではあるまい。まぁ、現実はそんな簡単なものではない。発想だけでは2時間の映画は引っ張れない。第1級のエンタテインメントに仕立てるためには、恐るべきお金が必要だ。これをちゃちな映画にしたなら、ただのお笑いにしかならない。見る前はどうせ中途半端な代物だろうと高をくくっていた。だが、出来上がった映画は予想を大きく反した佳作である。傑作とはいくら何でも言わないが、これだけ健闘していたなら僕は満足だ。
ディテールを丁寧に見せていくことで、このストーリーおもしろさにリアリティーを与えることに成功した。TV出身で『木更津キャッツアイ』の金子文紀監督作品なので、まるで期待はしなかったがこういう誤算はうれしい。中途半端にお話の面白さのみに依拠した映画なら最悪になったはずだ。金子監督は淡々と事実を追いかける。主人公である水野の目線から、基本的にはすべてを見せるのもいい。(満を持して吉宗が登場するシーンは、あれでいい)彼の目に見える事だけをきちんと描く。
彼が吉宗と出会い、一瞬心を通わせ、別れていく。2人は住む世界が違う人間だから、それ以上関わりは持たない。この潔さがこの映画を気持ちのよいものにした。水野を演じる二宮和也は貧弱すぎて、美男子にはほど遠いが、芝居は上手いのでなんとか許せる範囲内だ。それより何より将軍吉宗を演じた柴崎コウがいい。凛とした佇まいで女将軍を見事に演じて見せる。登場シーンは少ないが、彼女がこの映画を支えた。彼女の存在抜きでこの映画は成立しない。彼女をぶれない女として、描かれるのがいい。だから、甘いだけの映画にはならない。彼女は将軍として、江戸幕府を再建しようとする。その部分は残念ながら2度ほどセリフで語られるだけで実際には描かれないが、それはしかたないことだ。これはあくまでも大奥の話だからだ。必要以上に話を広げないのがいい。映画として、とてもバランスがいいのだ。
所詮エンタメなので、まず娯楽映画として、おもしろくなくてはならない。この映画を通して何かを告発するとか、そういうことは一切ない。見せ物としておもしろければいい。しかし、作り手が舐めた作り方をしたなら、それすら不可能になる。というか、それってとても難しいことなのだ。覚悟してかからなくてはならない。金子監督以下スタッフは妥協しない。つまらないTV時代劇のような手抜きはない。細部まで豪華に見せる。きちんとこの世界を造型し、そのなかで、閉ざされた世界である大奥を絢爛豪華に見せる。
だから、ラストの甘さは許せることになる。あれはエンタメとしての王道だろう。カタルシスがある。時代劇だが、まるで現代劇に様な映画だ。際物だが、そんなことは承知の上で堂々としている。