作・演出はいつものように 和泉めぐみ。 劇団のこと、役者たちのことも知り尽くした座付き作家の作、演出で贈る渾身の力作だ。1時間50分は怒濤の展開であっという間に終わる。たった7人の役者がアンサンブルも演じながらなんと20人に及ぶメインキャストを演じきる。狭い劇場を縦横に使う圧巻のスペクタクルだ。ほぼ全編舞台上には7人が並ぶ。なのに、目まぐるしいまでの華やかな衣装替えを一瞬で繰り返し、さまざまな役を演じわける。まさかの芝居だ。
もちろんこれは今までもこの集団がやって来たことで、今に始まったことではない。だが今回は今までとは一味も二味も違う。あらゆる面で洗練された。蘇我氏の悲劇に焦点を当てたストレートな物語も素晴らしい。全編を彩る歌と踊りもストーリーをしっかりカバーしている。そしてこれもいつものことなのだが衣装が素晴らしい。ミュージカルタッチというスタイルがしっかり作品と融合した。見事に。
前半の主人公蘇我馬子を演じた雨下結音が後半の主人公蘇我蝦夷、中村多喜子の宿敵中臣鎌足として登場する。彼女は真反対のキャラを演じきる。同じように中村は前半、幼い蝦夷と馬子の宿敵、物部守屋を演じ、歴史は繰り返す皮肉を体現する。このふたりが素晴らしい。もちろんさまざまな周囲の人物を演じた5人も、だ。この国の未来を夢見た蘇我一族が一瞬で滅びていくまでの軌跡をたった100分ほどの長さに仕立てて描いてみせた。