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映画・演劇のレビュー

突劇金魚『鰐と花と欲望ゴールド』

2006-10-08 00:32:33 | 演劇
 正直言って驚いた。このとんでもなくへんてこな芝居、そのエネルギーに参った。久々に訳のわからない芝居を見たと興奮している。
  
 締め切った女の部屋。繰り返される男たちからの電話。しかし、女はお腹が痛くてじたばたしているから、本当は外出なんて出来ない。なのに男たちに「もうすぐだから」とか言っている。

 女は、部屋の中で卵を産み続けている。それは鰐の卵のようだ。そして、腹痛は出産の痛みなのだ。自分の産んだ卵を握りつぶす。まんまるの卵はぐちゃりとつぶれて、黄身が手のひらからこぼれる。

 女は「卵を産む女」ということで見世物にされ、檻に入れられてテレビ番組に引っ張り出される。この展開はかなりシュールだ。しかし、この芝居は全編こういう突飛なイメージを当たり前の事として見せていく。そこにこの芝居の面白さがある。夢のような居心地の悪さを何のこだわりもなく、さらさらと見せていく。その明るさがいい。黒澤清やデビッド・リンチの悪夢とは全く違う、このあっけらかんとした悪夢とすらいえないようなイメージの連鎖。

 女は檻ごとアイドルタレントの家に連れて行かれる。アイドルは毎日ゲテモノばかりを食べ続ける女で、彼女の元にグロテスクなマンガを描く男や彼女の友人、更にはストーカーがやってくる。卵を産む女は失踪し、アイドルたちは女を追いかけて山に入り、そこで1人の男と出会う。彼は卵を産む女を苦しめるために呪いのスープを作り続けていたのだ。と、ストーリーを書けば書くほど、無意味な世界が広がる。

 先の読めないストーリーはバカバカしさと紙一重だ。それが大団円を迎えたとき、僕たちは更なる訳の分からないパーティに巻き込まれ、困ったような能天気なエンディングを見せられる。「えっ、これって何なんだ」と唖然としたまま芝居は終わる。

 役者たちのとってもサイケな衣装もよく、劇中にインサートされる鰐たちによる家庭劇もますます訳のわからない世界を増幅させていく。意味のわからなさをこんなにも心地よく受け止められる稀有な芝居である。

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