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映画・演劇のレビュー

『シャッターアイランド』

2010-03-31 22:18:12 | 映画
 マーチン・スコセッシの新作なのだが、なんとも中途半端な作品だ。『ケープ・フィァー』ラインでの仕事で、作りものめいた設定の中、いかにも「お話」という感じの謎解き映画は始まる。まぁ、悪くはない映画だが、わざわざ見るまでもない。

 前半は一体どうなっていくのか、と結構ドキドキもする。しかし、ちりばめられた謎がうまく機能していかないからだんだんイライラしてくる。さらには後半に入ると、話自体が何でもあり、になっていく。ラストの処理なんかあまりに下手すぎる。だから、「最後の謎が解けたとき、本当の驚きが待っている」というコピーのヘボさに、がっかりさせられる。ネタバレなので、書かないが、あれをしていいのなら、この映画のそれまでの努力はすべて水の泡ではないか。

 映画の緊張感は2時間18分も持続しない。それは台本自体の不備としかいいようがない。仕掛けのある台本は、当然のことだが、その仕掛けが生きてくるように演出しなくては意味がない。これ見よがしのこけおどしでは息切れしてしまう。第3の病棟に入っていくところから、ホラーみたいになっていくのも、なんだかなぁ、と思う。

 主人公の連邦保安官ディカプリオの焦燥が、実はこの事件のせいではなく、妻を殺した放火魔に向けられていたことがわかり、さらにはナチの収容所で見た地獄のような風景がトラウマになっていたことが明確になっていく中で、彼の心の内奥に巣食うものと、この映画がいかにむきあうか、そこがこの作品最大のテーマなのだが、つまらないラストがすべてを台なしにしてしまう。




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