とてもわかりやすい芝居だ。何から何まですべてを説明してしまう。でも、テンポがいいからそんなことは気にならない。ただ、ほんとうはもっと端折るところは端折って、見せるところはじっくりと見せるというメリハリがあったなら、もっとよくなるのに、残念。(そういうところはこの作品に続いて見た『スプライサー』に対しても言えることだ。丁寧すぎて、そこが徒となる。)
きっと彼らは真面目なのだ。真面目すぎてずるさがない。でも、演劇って(というか、芸術表現全般に言えることだが)ある種のずるさを武器とするものなのだ。見せたいものをより鮮明に見せるためには、嘘をついたって構わない。(だいたい、そういうのを嘘とは言わないし)
彼女に振られた男がその彼女を見返すため、1年間で復活して彼女を取り戻そうとするけど、約束の1年後になっても、やはりもとのまま。進歩はない。しかし、1枚買っていた宝くじが当たっていたのだ。それだけで色んなことが上手くいくか、と思われたのだが、世の中そんな簡単にはことが運ばない。彼はまず、銀行に向かうのだが、そこでわけのわからない女と遭遇する、とかいうところから始まる1日のお話である。ドタバタコメディなのだが、まぁ、よくある単純なお話ながら、とてもよく出来ている。90分安心して見ていられる。でも、それだけ。エンタメなのでそれ以上のものはいらない、といえばそれまでなのだが、もう少し、何かが欲しい。収まるところにすべて丸く収まったならハッピーエンド、なのだけれど。