それにしても、《2本立!》 なんとも懐かしい響きだ。昔はほとんどの日本映画が2本立だった。外国映画だってB級映画は2本セットで公開された。場末の2番館なんて3本立、4本立なんてのもあった。今ではなんでもかんでも1本で公開される。貧乏な人は劇場で映画を見るな、と言われているようだ。まぁ、今ではレンタルで安く映画がいつでも見れるから、わざわざ劇場で見るようなケースは特別なことなのかもしれない。今回の粋な計らいは本当にうれしい。フランス映画社に感謝。そう言えば、最近フランス映画社(バウ・シリーズ)の作品をあまり見なくなったことに気づく。ほんの少し前まではベストテンに選ばれるような映画はことごとくここの配給作品だった。信頼のトレードマークが「BOW」(ベスト・オブ・ワールドの略)だったのだ。
そんなこんなで今回のアベル&ゴードン監督作品に寄せる期待は大きかった。なんとなく、パトルス・ル・コントが初めて日本に上陸したときのような、あるいはアキ・カウリスマキがやってきたときのような、そんな予感。しかも、ここまで地味に公開されるのもなんだか目利き(!)としては、気になった。2本立で、たった2週間、しかも、1日2回しか上映されないなんて、気合いを入れなくては見逃す。長編2本をセットで上映するなんてのも、なんともリーズナブルですばらしい。チラシに書かれた簡単なあらすじにも興味が惹かれる。ワクワクしながら梅田ガーデンシネマに。
期待しすぎはよくない。先日の『食べて、祈って、恋をして』で散々痛い目にあったところなのに。ちゃんと書く。悪い映画ではない。そこそこはおもしろかった。それは認める。だから、落ち込むべきではない。
この2本を見ると、彼らの方向性は明確すぎるくらいにはっきりしている。パントマイムすれすれの、極度にセリフを削った描写。身体表現のみでも見せれるドラマ。単純なストーリーなのだが、複雑な内面がすぱっと表現される。極端な描写によって、現実の中にある非日常な局面を作り出し、研ぎ澄まされた感性で、人間の思いもかけない心情を笑いに包みこんでリアルに見せていくこと。自らの方法論に乗っ取ってデフォルメされたドラマをスタイリッシュで、どこにもないような表現で見せる。確かにそれって凄いと思う。だけど、なんか、退屈だ。
ル・コントやカウルスマキを最初に見たときのような衝撃はない。ちょっと軽すぎるのだ。結局、一番大事なことは、どれだけ人間を描けるか、そこに尽きる。成否の境目はその一点だ。アベルとゴードン、そしてブルーノ・ロミ(これはこの3人による共同監督作品だ!)のこれらの映画は、見ているうちに、だんだんそのスタイルに飽きてくる。しかも、そのストーリー展開に、だからどうした、と突っ込みを入れたくなる。この程度のドラマでは映画として納得がいかないのだ。
『アイスバーグ!』のフィオナはどうして夫と子供を棄ててまで、氷に魅せられるのか。わからない。導入のイヌイットの女性が夫となる男と出会うまで、という外枠の話も、全体にちゃんとは収まらない。冒頭の冷蔵室に閉じ込められるエピソードは面白いのだが、表面的な面白さの域を出ない。その後の展開も思いつきのレベルでしか、笑えない。必然性がないのだ。
『ルンバ!』も同じだ。主人公の夫婦が交通事故に遭うのだが、必然性がない。まぁ、事故なんで、必然性がないのは当然のことかもしれないが、映画としてのリアリティーがないから、話に乗れない。フィオナが片足を失い、仕事も首になる、という展開も、夫が記憶喪失になったり、事故の原因になった男と、彼がつき合い出したり、という展開も納得いかない。ラストの海を見つめる2人のシーンもである。とりあえずこれで終わらせることは出来るのかもしれないが、何の解決にもなってないし、これによって、何も描けてはいない。ダンスのシーンはさすがに凄いのだが、それだけではダメだ。
原色を多分に使った美術とか、その他、細部までいろんな意味でよく考えられた映画ではあるだけに惜しい。
そんなこんなで今回のアベル&ゴードン監督作品に寄せる期待は大きかった。なんとなく、パトルス・ル・コントが初めて日本に上陸したときのような、あるいはアキ・カウリスマキがやってきたときのような、そんな予感。しかも、ここまで地味に公開されるのもなんだか目利き(!)としては、気になった。2本立で、たった2週間、しかも、1日2回しか上映されないなんて、気合いを入れなくては見逃す。長編2本をセットで上映するなんてのも、なんともリーズナブルですばらしい。チラシに書かれた簡単なあらすじにも興味が惹かれる。ワクワクしながら梅田ガーデンシネマに。
期待しすぎはよくない。先日の『食べて、祈って、恋をして』で散々痛い目にあったところなのに。ちゃんと書く。悪い映画ではない。そこそこはおもしろかった。それは認める。だから、落ち込むべきではない。
この2本を見ると、彼らの方向性は明確すぎるくらいにはっきりしている。パントマイムすれすれの、極度にセリフを削った描写。身体表現のみでも見せれるドラマ。単純なストーリーなのだが、複雑な内面がすぱっと表現される。極端な描写によって、現実の中にある非日常な局面を作り出し、研ぎ澄まされた感性で、人間の思いもかけない心情を笑いに包みこんでリアルに見せていくこと。自らの方法論に乗っ取ってデフォルメされたドラマをスタイリッシュで、どこにもないような表現で見せる。確かにそれって凄いと思う。だけど、なんか、退屈だ。
ル・コントやカウルスマキを最初に見たときのような衝撃はない。ちょっと軽すぎるのだ。結局、一番大事なことは、どれだけ人間を描けるか、そこに尽きる。成否の境目はその一点だ。アベルとゴードン、そしてブルーノ・ロミ(これはこの3人による共同監督作品だ!)のこれらの映画は、見ているうちに、だんだんそのスタイルに飽きてくる。しかも、そのストーリー展開に、だからどうした、と突っ込みを入れたくなる。この程度のドラマでは映画として納得がいかないのだ。
『アイスバーグ!』のフィオナはどうして夫と子供を棄ててまで、氷に魅せられるのか。わからない。導入のイヌイットの女性が夫となる男と出会うまで、という外枠の話も、全体にちゃんとは収まらない。冒頭の冷蔵室に閉じ込められるエピソードは面白いのだが、表面的な面白さの域を出ない。その後の展開も思いつきのレベルでしか、笑えない。必然性がないのだ。
『ルンバ!』も同じだ。主人公の夫婦が交通事故に遭うのだが、必然性がない。まぁ、事故なんで、必然性がないのは当然のことかもしれないが、映画としてのリアリティーがないから、話に乗れない。フィオナが片足を失い、仕事も首になる、という展開も、夫が記憶喪失になったり、事故の原因になった男と、彼がつき合い出したり、という展開も納得いかない。ラストの海を見つめる2人のシーンもである。とりあえずこれで終わらせることは出来るのかもしれないが、何の解決にもなってないし、これによって、何も描けてはいない。ダンスのシーンはさすがに凄いのだが、それだけではダメだ。
原色を多分に使った美術とか、その他、細部までいろんな意味でよく考えられた映画ではあるだけに惜しい。