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映画・演劇のレビュー

『ドライヴ』

2013-02-05 22:37:52 | 映画
 これを傑作と呼ぶのは、はばかられる。このレベルのアクション映画なら、以前は山盛りあった。ちょっと風変わりなB級アクション映画の佳作、そこどまりの作品だ。ドラマに奥行きがないから、それ以上のものにはならないのだ。冒頭の強盗シーンはなかなか見せる。主人公は抜群のドライビング・テクニックを持つ。警察を見事まいてしまう10分ほどのカーアクションは導入部として上々だ。

 主人公の抱える心の闇は、同じマンションの同じ階の住人である2人暮らしの若い女性とその息子と出会って、どう変わっていくのか。それが表層的なレベルでしか描かれないから、クライマックスの展開も生きてこない。自分の身の置き所を失い、よりどころのない人生を生きている彼が、たまたま出会った女に心魅かれ彼女の幸せを蔭ながら祈る。彼女には刑務所の入っている夫がいる。やがて、彼が出所してくる。彼は彼らが幸せに暮らせるようにその夫を助けようとする。だが、思いがけない事故で夫は死ぬ。それだけではない。彼もまた、命を狙われる。

 彼の中のいびつな心が、彼女を取り囲む悪夢を取り除くことでどうなっていくのか。そこがもっとスリリングに描けなくては、この映画は意味をなさない。これはゆがんだ恋愛映画であり、それが行き場のない暴力へと変化していく姿を通して、現代の『タクシードラーバー』になりえたかもしれないのに、と思うとなんだか惜しい。


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