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映画・演劇のレビュー

明朗会計『胡蝶』

2010-03-02 22:55:04 | 演劇
荘子の『胡蝶の夢』を題材にして6人の自殺志願者たちを描く、というアイデア自身は悪くはないが、描き方が曖昧でつまらない。これでは何が描きたいのかよくわからないからだ。

 こういう話だ。生きることに疲れた男女が、ネットの自殺サイトで出会い、集団自殺を試みるが、彼らはいずれも興味本位で集まっただけで、実は本気で死のうと思っていた人は、ほとんどいない。本気で死のうと思っていた者と、そうでない者との諍いが描かれる。

とても真面目な芝居であることは認める。しかし、ドラマの作り方が単純すぎるし、ここに集まった6人たちの関係性を描ききれないまま表層的なストーリーのみが綴られていくからつまらない。誰も純粋に死ぬ気なんてなかったのが、わかっていく過程もドキドキしないし、でも、彼らが必ずしも興味本位でここに来たわけではない、ということがわかってからの展開も、ひねりがなさすぎてつまらない。全体のテンポが悪くて、少し眠くなったのも事実だ。この内容で2時間というのはちょっときつい。

ネットで集まった見知らぬ他人による集団自殺というよくあるパターンの話だからこそ、そのアイデアから予想される以上のお話の仕掛けが必要だったはず。なのに、まるで予定調和で終わる。タイトルにある荘子の胡蝶の夢についてのエピソードがもっと作品全体の骨格を担っているのか、と思ったのに、ほんのワンエピソードの域を出ない。現実と夢の区別がつかなくなり、生きているのか、死んでしまったのかもわからないまま、それらが等価なものとなるような瞬間を、スリリングに見せて欲しかった。



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