習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『コレラの時代の愛』 ほか3本

2009-11-19 20:38:40 | 映画
 先週はたくさんのDVDを見た。それぞれ書きたいことがたくさんあるが、時間もないので、簡単にここに列記したい。

 まず、ガルシア・マルケスの映画化である『コレラの時代の愛』。これはちょっとがっかりだった。2時間17分に及ぶ大作だが、この題材では仕方あるまい。これでもまだ短いくらいだ。きちんとディテールを描かなくては面白くはならない。ストーリーを描くだけでいっぱいいっぱいになっている。表層的なストーリーで語れることなんてしれている。ただの壮大なメロドラマではつまらない。 

 このバカバカしさこそ描かなくてはなるまい。だからこれは本来コメディーになる性質の話なのだ。中途半端な文芸ものにされてもマルケスにはならない。50年以上もひとりの女に執着するストーカー男の異常な愛の物語である。純愛を貫くのか、と思わせて、そのくせ彼は500人以上の女と関係を持つ。こいつは一体どういう神経をしてるのだ、と思わせる男でもある。このモンスターを『ノーカントリー』のあの恐怖の殺人マシーン、ハビエル・バルデムが演じる。まぁ、それだけで充分恐いのだが。「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」のマイク・ニューウェル監督作品だ。まぁ、ハリポタの監督だから大味なのは仕方ないか。それにしてもこの作品に執着した作者の想いはどこにあるのか。それが伝わらないからつまらないのだ。

 
 金子修介が一条ゆかりのコミックに挑戦した『プライド』はその勘違いぶりが凄い。初めから大映TVのドラマを目指したのだろうが、この安っぽさと安直さを笑い飛ばせなかったのはなぜか。狙い通りのバカ映画なのに、そのバカが楽しめない。これもコレラ同様壮大なお話なのだが、主人公2人のぶっ飛び方がなぜか中途半端。どうしてこんなにも思い切りが悪いのだろうか。

 
 少しはちゃんとした映画も見ようと思いアカデミー賞受賞の長編ドキュメンタリー『未来を写した子どもたち』を借りてきた。きちんと襟を正してこのインドのスラムで暮らす子供たちのけなげな姿を見つめるつもりだったのだが、なぜか乗れなかった。確かにいい映画だとは思う。丹念に彼らの姿を追いかけている。その事実は認める。だが、映画としての感動がない。なぜだろうかと考えた。

 それはきっと、あまりにただ素直に事実を受け入れているだけだからだ。この映画の監督の、作家としての立ち位置がここからは見えない。だから、物足りないのだ。

 
 韓国の刑事ものである『俺たちの街』という映画も見た。単純なアクションではない。残虐な連続殺人を追うサイコサスペンスだ。冒頭の小学校の校庭で鉄棒に括られて殺されている女を見せるシーンは鮮烈だ。監督のチョン・ギリョンは「1つの街に住む2人の殺人鬼という状況の中で、現代人に欠けている関係性を冷徹に描きたかった」と語っているが、あまりうまくはいってない。2人の犯人と彼らを追う刑事と3人の描き分けは鮮やかだが、それだけ。模倣犯と最初の犯人との関係性がどう進展していくのかを、もう少し上手く描けてあれば、きっともっと面白かったのに。惜しい。

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