習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

ばんぱ_み『キーウイ』

2009-08-13 07:09:21 | 演劇
 森川万里さんのパワフルな存在感に圧倒される。彼女のひとり芝居である。ひとつの部屋。2人の男女。すれ違う2人のそれぞれの時間を、くるりくるりと反転させながら、見せていく。ちょっとエキセントリックすぎて、見ている僕らの腰が引けてしまうくらいだ。彼女の肉体、その全身を駆使したエネルギッシュな身体表現と、彼女が発する強い言葉の力に引き込まれていく。

 孤独な2人の心と体のすれ違いを繊細なタッチで見せていくはずの台本が、彼女の芝居によって霞んでしまうくらいだ。まず、森川さんがそこにいる。彼女を見ているだけで作品が成立してしまう。なんとも不思議な芝居だ。

 三角フラスコの生田恵さんと虚空旅団の高橋恵さんの共作による台本は、男性部分を生田さんが担当し、女性部分を高橋さんが受け持ったらしい。だが、そんなことお構いなしで、芝居はまず「森川さんありき」で成立する。彼女のからだを通して発せられるものが最優先される。演出の関川佑一さんもそこは十分心得ている。作家としてではなく、コンダクターに徹することでこの世界に貢献する。裏方に徹することは作家として不安が残ることかもしれないが、この作品にとってはそういうスタンスがどうしても必要なのだ。そのへんを彼はよく知っているから出しゃばらない。演出だけでなく台本のドラマも森川さんに奉仕する。その結果ストーリーが後景に沈んでしまうことになった。全体のバランスが幾分いびつになってしまったことは否めない。しかし、そのため作品は孤独な男女内面を描くドラマのはずが、感情的で激しいものとなり、思いもかけない迫力を持つこととなった。植物のキーウィと動物の(鳥)キーウィに象徴させて2人に生き方が描かれるのだが、そんな図式なんてどうでもよくなる。

 男の出て行った部屋で、ひとりで生きていける、と言い放つ女の強さを帰着点として1時間の物語はしっかり幕を閉じる。お見事!

 

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