たった81分の映画なのだが、この濃密さ。テンポが早いから、一瞬も目が離せない。情報量は多いわけではないけど、登場人物が多いから、ひとりひとりの短い描写からいろんなことを理解しなくてはならない。覚えきれないよ、だいたい誰が誰でどうした、ということもわからない。10人以上の主要人物が11分間の中で右往左往する。そうなのだ。この映画はある日の午後5時から5時11分までの出来事が描かれる。事件はそのラスト1分だ。衝撃の結末に唖然とする。ないわぁ、それは、と。
11人(たぶん)の11分間。それを最初の5分でダイジェストして、紹介し、次の60分で5時から5時10分までの出来事が描かれる。彼らのそれぞれのお話がすれ違ったり、関係ないところであったり、交錯していくこともある。やがて、ラスト1分間が。10分で描かれる。
でも、お話自体はなんだかなぁ、とお話で、終わってみると、こんなのでいいのか、と思う。強引につなぎ合わせるし。終わったとき、そういうことだったのか、という謎解きにはならない。それぞれの視点が交錯していくことで真実に到達する、というのが定番なのだが、妻の浮気現場に行って暴れるオヤジの話でしかない。それにたまたまみんなが付き合わされている(巻き添えを食らう)感じ。迷惑な話なのだ。運命だから、なんて思わない。こんな運命はいらん。
描かれていないことも含めて、謎は謎のまま。余白だらけの映画で個人個人の情報量が出し惜しみされてある。ずるい。しかも、互いに影響を与え合う、というほどでもない。最後の事件によって生き残るものも、死んでいくものも、たまたまそうなっただけで、入れ替え可能。タイミングの問題なのだ。そして、ここに描かれた事件、事故もこの世界のシミでしかない。スクリーンの隅の黒点。
面白いアイデアだとは思うけど、それ以上のものではない。昨年キネ旬のベストテンにも入賞したし、評判の作品だったけど、企画倒れ。