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映画・演劇のレビュー

『東京战争戦後秘話』

2023-08-13 09:32:00 | 映画

大島渚の1970年作品。今まであまり上映されずにいた作品だが、なんとAmazonプライム・ビデオに入っていて驚く。早速見ることに。僕は10代の頃、大島渚に嵌って、自主上映を探していろいろところに見に行った。でも、残念だが大阪ではこの映画を見ることはできなかった。

 今更だが、ずっと見たかった映画だから嬉しい。(40年前ならもっと嬉しかっただろうが・・・)50年以上前の映画。当時タイトルの 『战争』が読めなくて困ったことを未だに覚えている。
 
こういう下手くそな大学生の自主映画みたいな作品をあの大島渚が作っていたのかという驚き。しかも1970年に、である。これは彼の2本の最高傑作『絞死刑』(68)と『儀式』(71)の間に撮った作品なのに、こんなにも実験的な映画を撮っているのだ。もちろん『帰ってきたヨッパライ』や『新宿泥棒日記』もこの間に撮った作品だし、あの『少年』だって69年作品だ。この時期のまだ若かった彼は怖いものなしだったのだろう。
 
自殺した仲間の残した8ミリ映画に囚われた男の妄想が描かれる。死んだ彼の恋人とふたりで彼が何をしたかったのかを探る。彼らは1969年4月の沖縄デーにおける闘争を撮影していてそれを映画にしようとするグループらしい。学生運動をフィルムを通して援護する。
 
そんな政治的背景を持つはずの映画みたいなのだが、描かれる個人的な問題とリンクしないから、わかりづらい。この映画が何をしたいのかわからないままラストに至る。死んだ彼と追いかける彼は同一人物だったというオチもなんだか陳腐だ。ただ、当時の風景が見事に切り取られていてそれは新鮮。風景が時代の空気を、気分をしっかり捉えているから、彼らの無念まで伝わってくる気がする。とても不思議な映画だった。

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