30年の歳月を経て、完結編として再登場するあぶデカである。もう化石と化した映画が21世紀に再びよみがえる。ありえない。それはこの映画が往年のプログラムピクチャーだからで、今の時代、もうそんな映画自身が作られる土壌はないからだ。TVシリーズの映画化は今の時代も花盛り。だが、今のTVシリーズは昔のようなおなじみのものではなく、単発に近い。その完結編として劇場で終わらせるというパターン。今公開中の『信長協奏曲』のようなのが定番だ。だからいろんな意味でこれはアナクロの極致をいく作品なのである。20世紀が今頃よみがえってきたって感じ。
内容もTVそのままで、よくある映画版としてパワーアップという形を敢えて取らない。そこも確信犯的でいい。いい、というふうに思えれない人には、もうこれはあり得ない産物だろう。上映時間は90分で、2本立で上映するような代物をあえて作る。お約束は一切はずさない。定番で安心。よう、待ってました、の世界。見に来る観客はもうあぶデカのファンだけでいい。
そんなこんなすべてを踏まえた世界観に基づく映画なのに、それがマニア向けではなく、広く一般大衆に向けられる。TVがまだまだ王様だった時代の遺物だからだ。スタッフも30年前から変わらないまま。脚本柏原寛治、撮影仙元誠三、監督村川透。キャストはもちろん同じ、お馴染みの面々。
個人的には村川さんの新作が見られるというのが、僕がこの映画を見た理由だ。
僕はあぶデカのファンではない。こういうバカバカしいものは好きではないからだ。だけど、久々に村川透監督の映画が(もしかしたらこれが最後かもしれない)、と思うとこれはどんな作品であったとしても、外せない。本当はシリアスな映画が見たかった。彼の最高傑作であり映画史に残る作品『野獣死すべし』のような奇跡の映画を今も夢見る。だが、もうそれは不可能だ。せめて、村川監督がメガホンを取る。それだけでも、よしとする。
定年をあと4日後に控えたタカとユージの2人が、最後にやばい事件に嬉々として取り組む姿を描く。人間こんなふうにいつも楽しく生きられたなら本当に幸せだろうと思う。まぁ、現実にはあり得ない話だが、でも、彼らはいとも意気揚々と仕事で遊んでいる。映画ならではのそんな虚構をみんなで楽しんでいる。だから、このラストもノーテンキなまま、終わる。エンディングの無意味なオーストラリアロケもいい。無駄の極致がこの映画の身上である以上、あそこにちゃんとお金をかけていい。定年後の彼らの仕事もそりゃそうだろ、と思わせるのもいい。
肝心の本編だが、別に語ることは一切何もない。いつも通り。可もなく不可もなく。でも、最初に書いたように、これは現代の映画ではないから、勘違いして見に行かないように。映画だと思えば、腹が立つばかりです。でも、あぶデカだと思うと、すべて許せる。そんな作品であることは、みんな了承済み。ただ、何度も言うようだけど、村川映画だと思うと、少し悲しいから、そこはちゃんとスルーすること。もちろん、そんなことも期待して劇場に行く人はほんの数人だろうけど。