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映画・演劇のレビュー

うさぎの喘ギ『うさり』

2018-01-18 20:30:50 | 演劇

 後半まるで同じ話がリピートされる。最初は勘違いか、と思うくらいにさりげないのだが、だんだん完全に同じじゃないか、と気付いたとき、どこから変わり、どこでオチをつけるのか、少しドキドキした。なのに、最後まで同じ、というのは、どうなのか。もちろん、そこに込められた意図は理解できないわけではない。

 

だが、なんだか違う気がする。そんな簡単なものではないはずなのだ。切実な問題と向き合う。20歳を前にして妊娠して、大学を続けるか、やめるかの岐路に立たされた女の子の憂鬱。それを3人の女の子たちが演じる。ひとりを3人が演じるのではなく、複数の人物を3人が共有しながら演じる。だから時に役がスライドしていく。その感じが新鮮で、面白い。ストーリーをどこかに集約させない。ヒロインが移り変わることで、しかも、そこに確固としたルールもない。まぁ、厳密に言うと、ないわけではないけど、緩い。3人はそれぞれ感情的になることなく、ポーカーフェイスで演じる。3人はそれぞれ編み物をする女、本を読む女、カメラを持つ女という役割を与えられている。もちろん、それには意味はない。ただの記号だ。3人はそんな記号としてこのお話を演じる。私が彼になり、彼女になる。入れ替わる。もとに戻る。会話ではなく、内面の声のように。生々しい話なのに、さらりとしたものになる。人が生まれ、死んでいく。自殺によって、電車が止まる。中絶か、出産かというお話からどんどん世界は広がる。

 

実に実験的な試みだ。自分たちのスタイルをちゃんと持っていて一貫性もある。それだけに、変わらないふたつのお話の繰り返しという基本アイデアがちゃんと衝撃的なものとして観客に伝わってきたなら傑作になっていたのにと思うとなんだか惜しい。


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