30年以上の歳月を経ての待望の続編。いや、そんなことではない。ようやく手塚眞の新作映画が見られる、ということが、まず嬉しいのだ。彼が新作長編に挑むだけでもいいのに、それが32年の歳月の果ての「星くず兄弟」というのも、なんだか彼らしくて、期待は高まる。前作を公開時に見た時、興奮した。こんなばかばかしい映画が作れるのだ、と感動した。そこに意味なんかなくていい。その後、彼は渾身の超大作『白痴』を作る。あの映画を見た時、やはりこの人は凄い、と感動した。大好きな映画だった。だが、あの作品の後、沈黙する。
近年全く新作映画がなかったし、彼はもう劇場映画を撮る気はないのかも、なんて思っていたところに今回の新作である。青天の霹靂とばかりに喜んで公開直後の劇場に行く。(公開5日目)
だが、なんとシネリーブル梅田には6人しか客はいなかった。1日3回上映の夜の回なのに、である。前作のファンは土日で見たのか。というか、それほどしか、客は集められないのか。誰もこの映画に興味を持たないし、知らないというのが、現状だろう。僕が声を大にして「おもしろい!」と叫んだところで、誰ひとり耳を傾けないだろう。映画の出来不出来なんかと、関係ないところで、なんだか、寂しい気分になった。
チープで、バカで、暑苦しく、バブル期の80年代のノリで、化石のような映画だ。アナログ仕様で、行き当たりばったりのその場しのぎのような、お話。アホらしくて、とんでもなく楽しい。でも、乗れない人には耐えきれない映画かもしれない。実を言うと、僕もほんとうは乗れなかった。
なんか取り残されるような不安に駆られる。最初は笑いながら見ていたのだが、だんだんこんなのでいいのかと、思い始める。2時間越えの作品で、ここまでどうでもいいようなノーテンキな話で、それをただ笑いながら見ているだけで、いいのか、なんて。
ロックの魂が映画を駆け抜けるぜ、なんていう時点で、ダサい。そのダサさが映画の力になっているのだけど、21世紀の今、このノリはちょっとヘビーなのだ。いろんなことを十分わかりきった上で、こんな映画を今の時代にぶつけてきている。何の意味もない「石ころ」を探して月の沙漠を旅する。そこに何らかの寓意を込めるわけでもない。とことん、バカをやり尽くす。その情熱が心地よい。だが、それをどこか醒めた目で見ている自分もいる。相反する感情が同時に混在する。見終えて時、ため息が出た。素直には楽しめないのが悲しい。