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最速で見る。初日の朝一の回。期待はしているけど、最高ではないだろうとは思う。引退を撤回して挑んだのは諸事情からだろうし、最後にもう1本作るのはどうしても作りたかったからではなく、期待に応えるためのファンサービスかもしれない。世界が彼の新作を待ち望んでいる。だから気力を振り絞って作る。無理しているかもしれない。だけど、作る以上自分が納得するものを作りたい。観客のためではなく、まず自分のための映画。それが結果的に観客に届くと。
宮崎アニメの集大成である。だけど、傑作ではない。たぶん人生の総決算の映画にはなっている。確かに今まで見た宮崎アニメのエッセンスがしっかり詰まった映画だ。やりたい放題している。お話は破綻もあるし、まとまりはない。だけど気にしないで突き進んでいく。
日本が戦争に突入していく時代。火事で母親が焼け死ぬところから始まる。数年後、父は再婚して、少年は父と一緒に新しい母の住む田舎町にやって来る。新しい母は死んだ母とそっくりで驚く。彼女が暮らすお屋敷には7人の湯バァ婆がいて、彼の世話を焼く。義母は母の妹だ。だからここは母の実家。ここでの新しい生活が始まる。
ここまでが導入。お話はここから始まる。ちゃんとファンタジーになるし、冒険活劇にもなるから安心していいだろう。だけど手に汗は握らない。いささかテンポは悪く、ドキドキもない。それは主人公の少年の想いが伝わってこないからだ。前作『風立ちぬ』もそうだった。それまでの宮崎アニメとは一線を画す作品だ。時代背景に第二次世界大戦下の日本というリアルを持ってきたからだろう。素直にワクワクドキドキはしない。させない。
母親を奪い返す、という子どもらしい正義感は影を潜める。失踪した義母を探して自分から不思議の世界に迷い込むのだが、正義感というより義務感って感じ。さらにはラストの「世界を救うより、自分たちの日常を取り戻す」という展開にも切実さはない。世界の秩序を守るために身を捧げないでいいけど、あまりにあっけなくてそれでいいのかな、と心配になる。ひとりひとりがしっかり自分の人生を生きろとでも言っているのか。そんなの言われなくてもわかっているし。
2時間の映画は完成度も高くさすが宮崎駿、と思わされるけど、なんだかすっきりしない作品だ。