ふたつの時代、ふたりの時間から描かれる100年の物語。とある老舗出版社(明らかに小学館がモデル)の100周年記念事業のために創設された学年誌創刊100年企画室に勤務することになった明日花が主人公。彼女はここでの仕事を通して戦時中祖母がこの出版社で働いていたことを知る。
若き日の祖母が学年誌編集部で過ごした時間と今、ここで孫である明日花が戦時中のことを調べる時間が交互に描かれる。祖母の2年間の日々と明日花の今が交錯していき、お話はまさかの展開につながっていく。
戦時中の不本意な記事。軍部からの要請を受け入れるしかないけど、ささやかな抵抗を試みる。最悪の中でも子どもたちのために、何ができるかを模索した日々。
ファッション誌から飛ばされて不本意な日々を送っていたが、児童書に目覚め、祖母のことを知る。学年誌がもう顧みられない時代においてそれでも、必要を信じること。
祖母の話から、いきなり67年の野山さん(当時の編集長)の話になったところは意外だったが、それが再び祖母の話に見事つながるところは快感。この本を読んで昔、『小学1年生』を買っていた当時の感動を思い出した。
実はもうひとつ感動したことがある。この夏、たまたま帰郷したりんちゃんたち(もちろん孫ですが)が『小学1年生』を買ってきて、一緒に付録を作ったことだ。そのあまりの凄さに感動した。こんなものを作るってなんなんだろうか。大人だけど驚く。
この本を読んだのはその直後だった。だから、このタイミングでこの本をたまたま読んだという偶然にも驚いている。