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映画・演劇のレビュー

『ベスト・キッド』

2010-08-12 20:14:24 | 映画
 あの『ベスト・キッド』がなんとジャッキー・チェンを師匠役に迎えて再映画化される。しかも主人公の少年はウイル・スミスの息子で父と共に『幸せのちから』で主演したジェイデン・スミス。さらには舞台が北京。アメリカのメジャーが、本格的に中国を舞台にして映画を作るのは、これが初めてのことではないか。北京の街並みをどう切り取り見せるのかも楽しみだった。だが、仕上がった映画はべつに舞台が北京である必要のない映画だった。北京はただの背景でしかない。これでは意味がない。娯楽映画だから背景なんかどうでもいいのかもしれないが、それにしてもおざなりすぎる。

 ストーリの方も、あまりにオリジナルに忠実すぎて驚く。もっとちゃんとアレンジしなくては、とてもではないが現代の映画としては成立しない。今という時代の息吹がまるで感じられない映画だ。ただのお子様向けの娯楽映画だから、という感じで、まるでやる気がない。時代錯誤と言うしかないような、たわいない「いじめっ子といじめられっ子のお話」になんて共感なんか抱けない。

 25年前ならこの単純な話でも大丈夫だったが、今、この話では誰も納得はしないだろう。アメリカと中国、その生活習慣の違い。環境の激変。たったひとりで(一応、母と2人だが)異国で暮らすことの不安。言葉も通じないし、ここには知らない人しかいない。そんな少年が管理人の初老の男(にはジャッキーは見えないが)と出会い、孤独なもの同士が共鳴しカンフーを通して絆を深めていく。

 この映画は、単なる図式にしか見えない。2時間20分もの上映時間があるのに、まるで2人の関係が描けないのは、どういうことか。この映画の監督には、表層的なストーリーしかないからだ。だいたいこれではアクション映画としてもどうだかなぁ、と思う。少年と初老の男が、巨大な敵に立ち向かう、という図式から想像できるような話から遠い。

 控えに回ったジャッキーは、当然のように表に出ない。出しゃばらないのだ。それはそれで魅力的だが、見せ場も含めてあまりにジャッキーへのリスペクトが足りない。せっかく彼を担ぎ出してきたのに、これではあまりに残念すぎる。

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