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映画・演劇のレビュー

しかばんび『シンカ』

2006-10-16 23:22:24 | 演劇
 ザムザが朝、目覚めると、お金になっていた。そして、世界中で人がお金になっていく。人は死んでお金を残す。残された家族のために。

 この芝居の発想の面白さはそこに尽きる。こんなふうな現実を見せながら、その事件が世界をどう変えていくのか、そこをもう少しリアルに描いてほしかった。20億を手にした青年がその使い道として何を選ぶのか、というところに話を持って行くのは悪くないが、そういうミニマムな視点から話が地球規模の物語に展開していくところにもう少し説得力が欲しい。

 せっかく面白い話を作ったのに壮大なホラにもリアルな現実にもならなかったのは、ひとえに芝居自体にメリハリがなく1本調子になっていることによる。大橋さんからバトンを渡されたしばなぎさんの演出が緩すぎで作品全体がルーズなものになってしまったのだ。章立てした構成は悪くないが、それによって全体の構成が甘くなったことも事実である。作品が逃げ場を作ってどうするのだ。

 演出は役者たちを動かすことだけで精一杯になり、芝居自体にダイナミズムが生まれないのが残念だった。大橋さんのぐちゃぐちゃな頭の中をしっかり整理して再構築出来る演出家がいたなら、しかばんびはすごい劇団になるかもしれないそんな気持ちにさせてくれる作品だった。。今回大橋さんが作家に専念して別の演出を立てたことは正解だっとたはずだ。しばなぎさんには次回を期待する。

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