13年のキネマ旬報のベストテンで第3位になった傑作だけど、今まで見逃していた作品。それを今日、こんな機会に恵まれて見ることが出来てうれしい。
実はこの映画がどんなお話なのかも(無知で)まるで知らなかったから、驚きの内容だった。これは今こそ見るべき映画かも知れない。イスラエルのガザ地区侵攻がニュースのトップを賑わす今、アイヒマンが捕まってイスラエルで裁判が行われる映画を見ること。
アンナは裁判のレポートを書くためにイスラエルに行く。彼女が見たこと、感じたこと。そこから出した結論。それが人々にどんなふうに受け止められることになったか。さらには彼女はそれとどう向き合うか、が描かれる。
マルガレーテ・フォン・トロッタ監督は妥協することなく信念を貫く女性を同じように妥協なく描く。
ユダヤ人虐殺の中心的首謀者であるアイヒマンを上官の命令を黙々と遂行するだけの凡庸な官吏として喝破した彼女は批判に晒される。だが彼女は信念を覆さない。「悪の凡庸さ」という答えと向き合うことで見えてくるものを冷静になって受け止めたい。