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映画・演劇のレビュー

極東退屈道場『ファントム』

2017-11-26 21:52:13 | 演劇

極東退屈道場『ファントム』

今回ターゲットにして取り組むのは「コインロッカー」である。毎回、「都市」の中のとあるひとつのアイテムを取り上げ、そこを中心にして、そこから抽象的なさまざまなドラマを想起し展開していく林慎一郎の新作。

 

0から始まる20のモジュール(と、彼が呼んでいる)で構成される。パンフにはモジュールの説明もある。「モジュールとは、システムを構成するひとまとまりの機能を持った部品。仕様が規格化・標準化されていて、容易に追加や交換可能な構成単位のこと。」と書かれてあるのを、芝居を見た後、知る。事前には何も見ないで芝居を見るから、終わった後のこういう解説は楽しい。なんだか、芝居のことがわかってくるような気になる。見ているときは、実は不安なのだ。何がそこで行われているのかがわからないまま、見続けるしかないからだ。

 

この6人の男女は何なのか、とか、彼らは一体何をしているのかとか、わからないまま、ただただおろおろしながら、舞台を見る。すごいスピードでいくつものエピソードが流れるように描かれる。意味を考える暇もない。こいつらは、何? なんていうことはどうでもいい。ただただ、その瞬間を楽しむ。

 

コインロッカーの中のあるもの。3人、3人の計6人の男女が、それを体現していく。女たちに先導され、男たちは彷徨う。町(街、都市)の中の様々な空間で、彼らが出会い、言葉を交わす。坂になった空間を登り、降り、佇み、倒れる。雑然とした空間は、モザイクのように組み立てられた彼らの物語。何が何だか、よくわからないものが、次から次へと展開していく。モジュールによって組み合わされ構築される世界の一断面。

 

柴田隆弘による舞台美術が素晴らしい。3つのゲートの中へと続く坂道。幕に隠されたその奥が大事なのではない。くぐり抜けることで、どこかにたどり着くわけではない都市という空間。6人のパフォーマーたち。彼らの見せる空間と連動した運動は芝居とかダンスとかいう枠組みには収まらない。だから、僕も「役者たち」とは、ここでは呼ばない。それを林慎一郎は「モジュール」と呼んだのだ。

 

いつものように、刺激的な芝居だ。林さんによるこの都市観察記録をいつまでも、見続けていたい。次回は「ダイエット」らしい。1年後を楽しみにしよう。

 

 


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