習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『二十歳』

2016-09-11 21:52:30 | 映画

 

70年代に一世を風靡したイスラエル映画(!)『グローイング・アップ』の昔からこの手のコミカルでほろ苦い青春映画は世界中にある。男子3人組は鉄板だ。これは韓国の青春映画。でも、これもまた、そのパターンを踏む。描かれるのはどこにでもあるようなできごと。まだ若い監督(イ・ビョンホン)と、彼の周囲の人たちの体験をモデルにしている実話的青春回顧ドラマだ。3人の高校生たちが主人公。そこは草原の中の三叉路。道の真ん中で立ち止まる。そこで3人は思案する。どの道を選ぶべきなのか、と。そんな象徴的なシーンから始まる。

 

映画は、彼らの20歳までが描かれる。というか、このタイトル通り20歳の出来事が中心になるのだが、たぶんその間の5年間くらい、回想を随所に挟み、ティーンの頃の日々を通して大人になる直前の戸惑いが描かれる。

 

3バカ・トリオの恋や友情。よくあるパターンなのだ。かなりコミカルなタッチで、彼らのバカぶりが、デフォルメして描かれるけど、コメディではない。それはこういうスタンスで描くことで、テレや恥ずかしさを覆い隠すためだ。それぞれのキャラクターも、わざとパターン化してある。笑わせることで、軽く流す。だが、そこにはちゃんと本音が隠されてある。思い返せば、バカだった日々。でも、彼らなりに一生懸命だった、はずの日々。それが愛おしい時間としてちゃんと描かれる。バカな映画だけど、これはこれで悪くはない。

 

あの頃の自分たちを振り返ると、みんなこんな感じだったのではないか。出来ることなら、記憶から抹殺したいほど、恥ずかしい行為の連続技。なんで、あんなにバカだったのか、赤面する。やり直せるなら今度はもっとスマートにする、なんて思うけど、きっとムリな話だと、知っている。どこでも、だれでも、こんなものではないか、とこの監督は言っているようだ。確かにそうだろう。

 

青春の一番愛おしい時間を、肯定して、懐かしむのではなく、「バカでした」と赤裸々に語ることで、ある種の等身大を提示する。バカでいいのだ。若かったのだから、と。これはそんな映画だ。

 

この夏の終わり、韓国に行った。その時、早朝のホテルの近くをぶらぶら歩いた。いつものことだ。旅に出ると、いつもそうする。観光地に行くより楽しい。そこでのどかな朝の登校風景と出会う。目的もないし暇だから、そんな高校生について行く朝の町の散歩。

 

校門のところまで、やってくる。さすがに学校の中には入れず、そのまま坂を上り、楽しそうな場所を探して散歩はどこまでも続く。ジグザグに歩き、やがて坂の見晴らしのいいところに到着。そこからプサンの町を見下ろすと、さっきの高校が見えた。ぼんやりと、校庭を眺める。

 

そこでなんと、高校生たちが一列に並ばされ、校門の前で先生からスクワットさせられているのを目撃した。遅刻か、なんか、した生徒たちであろう。そんなマンガみたいな光景をたまたま目撃して、なんだか笑ってしまった。安モンの青春映画じゃあるまいし。でも、現実のそんな光景が、もしかしたらここでは今も日常茶飯事なのか? のどか、というか、なんというか。この映画のワンシーンのように目に焼きつく。

 

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 劇団ひまわり 『チルドレンズ... | トップ | スクエア『芸人コンティニュー』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。