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映画・演劇のレビュー

『ナイト・トーキョー・デイ』

2011-11-28 21:14:47 | 映画
 なんだか冗談のような映画なのだが、きっと作り手は大まじめに作っているのだろう。監督はスペインのイザベル・コイシェ。彼のような真面目な人がどうしてこんな映画を引き受けたのか。よくわからない。

 映画はたぶんシリアスなはずなのだが、僕にはとてもそうは見えない。大体最初の女体盛りってなんですか。裸の女に人の体の上にお寿司を乗せる。バカバカしくて笑える。でも、実際こんなものがあるのでしょうか。僕にはわからない世界がたくさんある。それはさておき、ここで接待する日本人実業家が、いきなり暴れだす。愛娘が死んだという連絡を受けて取り乱したのだが、そのリアクションがなんだか嘘くさくて、付き合いきれない。この冒頭部分を見て、これはとんでもない映画かも、と思う。まぁ、確かにそうなのだが、監督があのイザベル・コイシェなのだ。それだけではないはずだと思う。

 クレジットタイトルのバックに描かれる川からの風景が美しい。東京の街を川から見る。その目線が新鮮だ。さらには切り取られる様々ななんでもないような風景がおもしろい。外国人が見た日本であることが際立つ。へんてこな日本だが、こんなのもあるのだと思わされる。夜の東京が美しい。スペイン人が見た東京は、なんだかどこにもない異国の街に見える。だから、このリアルではないお話もなんだか納得できる。

 これは現実の話ではない。不思議の国の出来事なのだ。殺し屋が、依頼されたターゲットと恋をして、彼を殺せなくなる。依頼人から催促されて逆切れする。それはないだろ、と思うが一切関知しない。これはこんな映画なのだ。大体あのつまらなさそうなワイン屋の男なんかに、菊池凛子がどうして心ひかれたりするのか。絶対嘘にしか見えない。ターゲットのこの男は、まるで魅力のない中年外国人オヤジでしかない。

 表情を一切変えない凛子は、絵空事の殺し屋。映画の中には銃を使うシーンもない。彼女は普段は魚市場で働く。ここでも彼女は誰とも言葉も交わさずただ黙々と働く。映画は、なんともスタイリッシュで、あまりに気取り過ぎていて笑える。彼女は自分が殺したターゲットの墓参りをする。それもなぁ、と思う。

 あの街頭でのキスは何だろう。マイクを持った男が「では、みんなキスしてください」とか言うとそこにいる人たちが一斉にする。そんな風景の中を凛子は我関せずで、通り過ぎる。あの電車の中をイメージしたラブホテルの一室も笑える。2人はいつもそこに行く。男が死んだ恋人といつもここに来ていたらしい。なんだかなぁ、である。まさかの勘違い映画で、これはこれでなんだか楽しかった。

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