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映画・演劇のレビュー

Super mountains club『ぼくと神様のこと』

2017-12-13 23:01:33 | 演劇

 

 あまりに説明的すぎて、くどい。偶然だが、同じウイング・フィールドでこの芝居の翌週に上演されるくじら企画『サヨナフ』も死者が部屋にやってくる話だ。死者たちの描き方の差を確かめて欲しい。彼らがそこに居ることの意味。ひとりひとりの存在感。それが大事なことなのだが、この芝居ではそこがお座なりになっている気がする。もったいない。

 

30歳になっても引きこもるしかない男の悲哀が描かれる。彼には死者が見える。彼らはこの部屋にいる。かつて彼がいろんなところで関わり合いを持った人たちだ。この狭い部屋にひしめく7人の男女。見えないのに、信じざる得なくなる幼なじみの女性も含めて、てんやわんやのコメディが展開する。そこに姉がやってくるのだが、彼女を巡るサスペンスがお話の終盤を引っ張っていくことになる。ここから一気にお話の核心に入るのだが、この姉の死を巡る部分に、もっと緊張感が欲しい。姉と弟の絆。幼なじみの女性との関係。それが7人の死者たちとの交流を通して、どこに向かうのか。お話の構造自体は悪くないはずなのだが、全体のバランスが悪い。

 

最初にも書いたように、この作品は説明のための説明が長すぎて、ダレるのが難点だ。段取り芝居のようなことは要らないから、個々人が彼をどれだけ必要としているのか、その切実な想いが伝ってくるような展開が欲しい。7人の温度差は面白いのだが、それだけでは意味がない。ここに彼らが引き寄せられ、なんとかして彼を助け出そうとする。それによって、彼がどう変わっていくことになるのか。そこをちゃんと見せて欲しかった。

 


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