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映画・演劇のレビュー

空の驛舎<fragment>vol.2「マスク・THE・忍法帳~怪人二十面相・伝・外伝」

2008-07-10 21:17:36 | 演劇
 北村想による小説『怪人二十面相・伝』を「一人語り」として再構成した『MONO語り「怪人二十面相★伝」』の第2弾である。作、北村想、演出、中村賢司のチームが再び二十面相に挑む一人芝居。前回の船戸香里さんから今回は主役を津久間泉さんへとバトンタッチして、同じように一人語りによってノンストップ100分間の大冒険が始まる。

 「血湧き肉踊る」なんていうクラシックな言い回しがぴったり合うような活劇仕立ては昔懐かしの紙芝居を見ているような感じだ。津久間さんの語りに乗って20面相が、とある事件に巻き込まれていき、何度と繰り返される危機を見事に乗り切ってお宝を奪い返し事件を解決していくという、これ以上単純にはなりそうもないくらいに単純な活劇だ。

 あまりにも二十面相が強すぎて、どんな状況にあっても彼は負けそうにないのが、なんだか腹立たしいくらいなのだが、それだって実はお約束なのだろう。

 前作は二十面相の生い立ちからスタートして、おきまりの明智探偵との対決も挟んだメーンストリームを行く大作だったが、今回は「外伝」とあるように二十面相が出会ったひとつの事件を丁寧に描く小品スタイルとなっている。その分コンパクトでストレートな構造になった。

 津久間さんは落ち着いてきちんとこの物語を見せようと努力しているが、所々走りすぎて、語りに「ため」がない。流れてしまう。正直言ってこのドラマを基本的には(黒子の補助はあるが)たった一人で演じきり、作り上げていく、ということは並大抵ではない。「走りすぎる」と先に書いたが、芝居自体はそれくらいのスピード感がなくてはつまらなくなってしまうのだから、テンポよく語ることは至上命令なのだが、じっくり聞かせる部分に余裕が欲しい。前作の船戸さんの場合はきちんと聞かせる部分とテンポよく走る部分とのメリハリがある作品だったが、今回はもっとエンタメよりの作品になっているから、難しいのだ。前作以上に困難な作品に挑み観客を飽きさせずラストまで引っ張っていったのはすごいことだ。

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