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映画・演劇のレビュー

百田尚樹『海賊とよばれた男』下

2013-07-24 20:39:31 | その他
結局、5日間で上下2巻を読んでしまった。もちろん、通勤の往復だけでは無理なので、休憩時間とかも使って一気読みしてしまった。これはそれくらいに面白いエンタメ小説なのだ。

 それにしても凄まじい生きざま。次から次へと彼を襲う苦難の連続技。それでも、勇気を持って立ち向かい、怯むことなく、戦う。これでもか、これでもか、と、困難や危機が彼に襲いかかる。長編大河ドラマのノリだ。だが、ここまでやられると、いささか食傷気味になる。しかし、これが実際に国岡商店を襲った現実だったのだから、仕方ない。実名を避けた小説だからといって、大袈裟な脚色はしていないだろう。ノンフィクションではないから、脚色は為されてあるはずだが、それは事実をゆがめることではないはずだ。

 それはこれを講談本のノリで見せるためであり、とても面白いエンタメ小説に仕上げるためだ。たったひとりで、(彼の会社の従業員たちとほんの一部の、でも、とても大切な理解者はもちろん彼の味方だが)世界中を敵にまわして戦い続けた男。その生き様には圧倒される。

 心休まる時間はない。一難去ったらまた一難。敵は次から次へと彼を叩き潰すために策を弄する。それに対して、素手で立ち向かう。無謀だ。しかも、一切妥協しない。あまりに一方的で理不尽だ。石油協会の仕打ち、政府の対応、アメリカを中心とするメジャー(7人の魔女たち)のやり方。だが、彼はあまりに潔癖で、正しすぎる。立派過ぎて、鼻につくほどだ。胡散臭い。

 でも、これは事実だし、彼の素晴らしさは否定できない。もう、彼の前でひれ伏すしかない。圧倒的に正義。だから、誰もが煙たがる。誰も彼を支えない。まぶしすぎて、入っていけない。読んでいてそんなふうに思わせるのは、少し失敗ではないか。もちろん、作者が、である。それはこの小説が主人公を一方的に描いてあるからだ。立派すぎて、嘘くさいと思わせてしまってはまずい。

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