原田ひ香なので、読んだ。それだけ。彼女がこういうタイプの作品をどう描くのか、それが楽しみだった。読み終えた感想はとりあえず納得、って感じ。実によく出来たパターン小説でお約束通りの展開の心地よさはある。でも、彼女じゃなくてはならないとは、思えないから、(こんなの誰でも書けるし、書いている)なんだか、肩すかしかも。
成海慶介は探偵ではなく、復讐屋。でも、彼は一切手を染めない。依頼は受けるけど、何もしないのだ。それって、詐欺じゃないか、と思うほどだが、何もしないことでうまく収める、というところがこの手の作品の腕の見せ所。5話からなる短編連作による長編というこれもまたよくあるパターン。
あるOLが自分を騙して他の女と結婚した男への復讐を依頼しにきて、そのまま助手となる。実はこの小説の主人公は彼女のほうで、成海との掛け合いでお話を展開させるというこれまたパターン。
読んでいて、楽しいのは事実。実に読みやすく、どんどん読んでいるうちに、もうおしまい、というパターン。しかも、読み終えると、なんだか元気になれる、というのも、いかにも。このふたりによる事件簿の続編がすぐにでも読みたくなるというのも、いかにも。こういうのばかりを読んでいると、きっとすぐに飽きるのだろうが、たまに、こういう清涼剤のような小説はたまに読むと、楽しい。
成海がこんな仕事に就いた理由とかも、ちゃんと描かれていて、彼の過去も、いかにも、で描かれる。どこまでが、確信犯なのか、わからないけど、特別なことは一切しないで、嫌味ではなく、ここまで気持ちよく読ませるのは凄いことかもしれない。原田ひ香はちょっとした職人作家だったのだ、ということを知る。