習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ストロベリーショートケイクス』

2006-10-17 21:54:01 | 映画
 こんなにも繊細な痛みを淡々と見せ続ける映画を、見続けることは、ある種の苦痛である。2時間7分。映画をずっと息を詰めて見る。4人の女性たちの姿を追い続けることになる。目を背けたくなるような痛みが、そっけなく描かれていく。

 4人の物語は絡み合いそうで、絡み合わないまま終わる。里子と秋代はちひろと塔子とは出逢うことはない。主人公4人が出逢わないまま終わる映画なんてきっといままでなかったはずだ。オムニバスでもないのに。

  2人ずつの2組の話として話は展開していく。同じような場所で生きているから街ですれ違っても不思議ではない。現にどっかですれ違っているかもしれないが、気付かないだけだろう。ラストシーンで一応4人は初めて同じ場所である観覧車の見える海岸に集うが、4人は同じフレームの中に撮らえられたりはしないまま映画は終わる。

 「最悪な出来事を乗り越えられた」としても、もっとひどい出来事がその後に待っているかもしれない。それでも人は生きていく。タイトルとはうらはらに、全く甘くない映画だ。シビアな現実の中で4人が、とことん傷つきながら生きていく姿を透徹な描写で冷静に見据えてていく。そこから目が離せない。

 好きか嫌いかと言われたら、とてもいい映画だけれど好きになれないと答えるしかない微妙さである。作者たちの4人に対する深い愛情が痛いほど伝わってくる映画になっているのに、それだけでは、まだ足りない。そんなどうしようもない孤独が描かれる。重くて辛い映画だった。でも、とても美しい映画でもある。

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