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映画・演劇のレビュー

未知座小劇場『明月記』

2006-10-17 21:14:53 | 演劇
 10年ぶりに未知座の芝居を見る。かって、アングラテント芝居を精力的に作り続けてきた未知座の芝居を見に行くのはとても楽しかった。次は何をしてくれるのかと、ワクワクドキドキしながらテントに足を運ぶ。『さよならジャパン』と『日本少年』の2本連続上演は最後の輝きとして心に深く残っている。ギリギリのところで最大限のチャレンジをする。まさにテント芝居の王道を行く傑作だった。まあ昔話をしていてもしかたない。

 本格的に復活を遂げた未知座によるテント興行、しかも闇黒光作品集と題された3本連続上演である。昨年大評判となった『大阪物語』のリニューアル版も含めて未知座の集大成のような企画。その第1弾が『明月記』。

 とてもエネルギッシュで、見ていてワクワクする芝居だった。これはかっての演劇のノリだと実感させられる。勢いだけでラストまで見せてしまう。もちろんそう見えるように作ってあるのだ。完璧な計算なくしてこれは不可能である。前半と後半のインターミッションですらアドリブではないという手の込みようである。

 2人の女は1人の女の2つの側面。彼女たちの対決を、追っていくうちに、人間の心の奥に蠢く様々な感情のうねりのようなものが見えてくる。

 明解なストーリーなどもちろんなく、様々なイメージをコラージュさせていきながら、女優2人の掛け合い漫才のようなやりとりを楽しみ、気付くと彼女の内奥世界に連れていかれる。曼珠沙華と打上花火の二人が当然素晴らしい。

 とてもなつかしい芝居だった。しかし、これが今の芝居としてはたしてどれだけの力を持つのだろうか、なんて、実は考えながら見ていた。不謹慎です。こんなに楽しみながら、終始違和感があった。ノスタルジアとして芝居を見てる気がして少し嫌だった。意味なんていらないから、この熱い塊を受け止めたらいいなんて言えない自分がもどかしい。もちろん理屈で説明せよと言われたらいくらでも言えそうだが、そんなものにこそ、意味はない。

 もう、無邪気に芝居の力が信じられなくなっている。それでも芝居を身続けている自分は、そこに何を期待してるのだろうか。今回この3本を見ることで何かが見えてくるのだろうか。まだ、これは今回の試みの序章だから、来週最後まで見た時に考えたい。



 

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