習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

夏川草介『神様のカルテ2』

2011-06-13 23:22:30 | その他
前作以上に心に沁みた。気持ちが弱っているとき、こういう小説はうれしい。『5年3組リョウタ組』もそうだったが、今度も小説からたくさん元気をもらった。

僕は医者と教師が主人公の小説や映画に弱い。この2つの仕事はとてもよく似ている気がする。どちらも無力である、という点が、である。もちろん医者は患者の治療を通してみんなから尊敬される仕事だ。それに対して、教師は生徒にいろんなことを教えてみんなを成長させる仕事だ。どちらも相手がいて初めて成立する。体を治す医者と、心を育てる教師。どちらも人間と直接向き合っている。僕はきっと人間が好きなのだろう。

医者も教師も、やってもやってもやりきったという満足感にはほど遠い。だから、時々疲れてしまう。ちょっとは息抜きしなくては、ダメになってしまう。そんなこと、分かり切ったことだが、それが出来ない。この小説を読みながら、主人公たちの気持ちが痛いほどよくわかる。

 僕はわざと出来るだけ手を抜くようにしている。でなくては、きっと自分が潰れてしまうからだ。若いときは1年に360日くらい休みなしで働いていた。土日なんか休んだことがない。それは今も同じだ。定期テスト直前の土日すら休めない事もある。特に月曜の朝はいつも死んでいる。まぁ、それはクラブのせいで、クラブ活動の指導さえしなれれば、休めるのだが、それでは生きている意味がない。しかも、週末は必死に時間を作って芝居を見ている。いつも劇場に着くと、フラフラだったりする。

この小説を読みながら、何日も休みなく、しかも24時間連続とかで、働く医者の姿を見て、本当に頭が下がる思いがした。こんなにもボロボロになっているのに、ヘラヘラしながら頑張っている主人公の姿は見ていると、自分ももっと頑張らなくてはならないと思わされた。誰かがどこかで犠牲になっている。そうすることでこの世の中は成り立っている。でも、本人はそんなこと気にも留めない。周りの人はそんな彼の頑張りに気付かない。でも、それを恨まないし、考えない。そんな詰まらないことを考えるほど暇ではないからだ。

医者である前に人間である、人間としてやらねばならないことがある。そんなきれいごとにも捉えられかねない言葉が胸にしみる。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『天国への郵便配達人』 | トップ | 『スーパー8』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。