全編手話で、音声によるセリフはない。しかも、字幕も出ない。だから、彼らが何をしゃべっているのかは映像と表情から想像するしかない。ストーリーもそこから理解するように作られてある。(僕はよく字幕なしで、映画を見るからこういうのは得意かも、と思うけど、この映画はなかなか難物だった)
決してわかりにくい話ではないけど、細部の説明はないから、よくわからないエピソードもたくさんある。しかし、そんなことお構いなしに2時間12分、ラストまでスタイルを変えず、一気に見せていく。そこにこの作者の意図や覚悟があるはずだが、僕はそこにあまり乗れない。なんだかあざとい。たぶんこの突き離されたような感じはマゾっぽい人にはぴったりだ。でも、構ってもらいたい人には勧めない。
これは、ろうあ者を描く映画という、そのなんとなくの枠組みから想像されるようなヒューマン映画からは遠く離れた犯罪ものである。高校の寄宿舎を舞台にして、ここに転校してきた男の子が、生徒たちの犯罪組織に入り、やがて、リーダーの恋人に横恋慕して、というようなお話。ラブストーリーかと思って見たのだが、そうじゃない。ポスターからは、少しエッチで過激なシーンもある(R18指定)けど、悲恋もののラブストーリーだと思わせる。だから、えっ、となる。見ていて、寒々とする。
映画を見終えたとき、心まですきま風が吹いていた。「2014年・第67回カンヌ国際映画祭の批評家週間でグランプリを受賞」とか、書いてあったけど、キライ。