習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ハックル』

2009-01-22 21:13:14 | 映画
 科白が一切ない。へんてこな映画である。こんな映画を作るほうも大概だが、それを見てしまう僕も充分に大概なやつだ。

 大体こんな映画が劇場公開されること自体、普通じゃない。おじいがしゃっくりをして、それが止まらない。それだけが描かれる。えっ!でしょ。ありえない。75分くらいの短い映画だが、話が話なのでそれでも決して短くない。おじいのしゃっくりはとまらない。だが、このおじいが主人公とはいえ、別にこのおじいにはドラマないし、周囲の様々な人たちの姿が同時に描かれるのだが、なんだかそれがどうした?という程度。

 ほのぼのしてて、毒にも薬にもならない。終盤に地震のシーンがあるが、大事件なのだが、それがどうした?って感じ。なんだか、よくわからない。でも、最初からよくわからない映画なのだ。どうでもよろしい。おじいだけでない、出てくる人たちが素朴で汚い。汚らしい顔したおやじがたくさん出てくる。おばぁやおじいや、そんなのばっか。虫とか蛇とか豚とかも出てくる。なんだかそんなのをいつまでも写していて、これはなんのための映画だよ、と思う。

 ハンガリー映画なんてのも珍しいが、そんなことより、わけのわからなさをわけのわからないままで、のほほんと見せる、その姿勢にあきれる。あほである。でもそんなあほな「しゃっくり映画」に最後まで付き合ってしまった。なんだかのどかでいい。

と、言いつつも実はけっこういろんなことがこの映画には隠されている。突然猫が死んでいたり、その原因が明かされるが、最後の地震も含めて、全体の「のほほん」の中に埋もれるように作られてある。だいたいしゃっくりが止まってめでたしめでたしだなんて、ありえない。そう思った瞬間また、しゃっくりが再発して、どうどうめぐりだ。いろんな映画祭でたくさんの賞を受賞している。なんだか「凄いえいが」みたいだが、実はたいしたことはない。でもそんなたいしたことのなさがすばらしい。

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