劇団大阪シニア演劇大学『煙が目にしみる』

１時間２０分という上演時間が実に好ましい。オリジナル台本をそのまま見せるのではなく、カットすることでエッセンスを抽出する。この作品の持つ雰囲気を大事にして、テンポよく見せて気持ちよく終わらせる。軽やかさはこの作品の身上だ。

　シニアだけによるよるキャスティングは、時に冗談のような配役も必要とするけど、それが楽しめる。（昨年見た作品は衝撃的だったけど、今回の女子高生も凄い。本当言うと、前回の幼女以上にこれには無理があるのだが）

　このケースも同じだ。ありえないような年齢を演じても許せるのは、彼らがシリアスに演じるのではなく、ある種のファンタジーとして、そこに立つからだ。だから、この芝居は、リアルじゃない。そして、そこが魅力なのだ。そんな構造を楽しむためには、長尺はよくない。本気で作品と向き合うのではなく、余裕を持って作品と向き合えるだけの仕掛けが必要になる。それが、大胆なアレンジで、エッセンスだけを抽出するという方法なのだ。心地よく見るために８０分という上演時間は機能的だ。いろんな意味でも、この長さがこの作品を魅力的にしている。

　役者たちが決して上手くないのも、いい。一生懸命なのも、いい。学芸会だというのではない。ちゃんとした美術やスタッフに支えられて、気持ちよく演じている。芝居自体の完成度も低くはない。大切なことは、彼らが台本の持つ魅力を理解して、嬉々として演じたことだ。この作品の提示する世界を体現する。「老いと死」という問題を誰よりも真摯に受け止めることができる人たちが演じているのだから当然のことだろう。