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映画・演劇のレビュー

浪花グランドロマン『舞う、舞え、王妃』

2018-02-21 19:18:54 | 演劇

 

ザ・九条の閉幕プログラムの1本として上演される浪花グランドロマンの新作。5年間にわたって大阪の新しい小劇場として愛され、活用されてきたスペースがこんなにも短い期間で閉鎖されるのは残念だ。NGRはここで初めての公演となる。小空間なら自分たちのアトリエがあるからわざわざ外で打つ必要はない。だけど、敢えて今回ここで公演しようとするのには、この空間に対する浦部さんの何らかの想いがあるからだろう。何度か照明スタッフとしてここでの公演に参加し、ここで上演された芝居を見て、「一度ここで大いに遊んでみたいと想った」と、当日パンフにも書かれている。

 

バックステージものをする。劇団が解散するかも、という危機的状況を背景にして、小劇場で演劇を続けることの意味を問う作品にもなっている。浦部さんは遊びを大事にする。それが時にスベる場合もあるけど、今回はとてもシリアスで真面目な芝居の中で上手く遊んでいる。本気でこういう話をここで今見せると重いばかりでつまらない。軽やかさがなくては、成立しない。

 

公演中の楽屋が舞台だ。土日の公演前後。土曜のソワレの後と楽日の前後。ピンポイントで短い時間の中で起こる出来事を描く。楽日に主役がいなくなり、(土曜の出番の後、いなくなった)それでも公演をする。逆境に負けないで、なんとかしてラストステージを成立させるまでのお話だ。だが、そこであまりテンションを上げないのがいい。危機一髪をどう乗り切るのかでハラハラドキドキさせる芝居ではない。これまでだっていろんなことがあった。長く続けてくるとどうしても最初のままではいられない。そんな劇団の事情が背景にはある。今回の事件だけが問題なのではない。だが、あえてそこには踏み込まない。お話は目に前に出来事だけで閉じていく。だから80分程度の芝居になる。

 

ストレートに自分たちのことをそこに投影させるのではなく、ある種の一般論で切り抜けるのは悪くないと思う。それは逃げではなく余裕だと思うのだ。このタイプの作品は、感傷的になり、感情に溺れたなら、ついていけなくなる。独りよがりの芝居になると悲惨だ。浦部さんは重くなりそうな話を軽いタッチで見せながら、軽薄にはならない。絶妙なバランス感覚で見せる。小さな芝居だから、このくらいの軽さが適切だ。さすがベテランと感心。20年以上劇団体制を維持しながら芝居をしてきたのはだてじゃない。

 


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