なんと3冊も連続して食を題材にした小説を読むことになった。(実はその内の1冊は食の話ではなかったが)たまたま借りた本なのだが、この手の軽めの小説をたまに読むのは楽しい。だけど、まさか一気に3冊。まず、一冊。これから読む。
実は3冊連続して読み、一括でここには簡単な感想を書くつもりだった。軽く読めるし、あまり書き残すこともないだろうと踏んだからだ。表紙のイラストもよく似たようなもので。だけど、3冊とも安易に一括処理なんて感じで終わらせてはならないくらいに魅力的な作品だった。軽めの文庫本だと舐めてはならないな、と反省してます。
まぁ読みやすいはずだから「いいかぁ」と読み進めることにしたその最初の1冊は、『星降る宿の恵みごはん』。「山菜料理でデトックスを」なんていうサブタイトルがついている。29歳の女性が主人公。リストラされて、旅に出る。5泊6日の田舎暮らし。小学2年の時、10日間を過ごした村にやって来た。母の田舎だけど、今はもう誰も親戚はいない。
リストラから人生を見つめ直すささやかな旅。美味しい味噌汁に出会えて、昔たった10日間だけ一緒に過ごした記憶の彼方にいた友だちと再会して、新しい一歩を踏み出す。こんな小説を読みたかった。ありそうだない。しかもこの軽やかさ。なかなか気持ちのいい小説で読んでよかったというレベルで感想を書くことができるのがいい。自分に自信をなくした女性の再生のドラマという大げさな話ではなく、これは、小さな旅が新しいスタートになる瞬間をさらりと切り取る作品。