習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『鴨川ホルモー』

2009-04-24 22:54:42 | 映画
 原作をそのまま映画にしたら、ちょっと長くなりそうなので、少しはしょってしまったが、その結果全く同じ内容なのに、つまらなくなってしまった。それっていったいどういうことなのか。ストーリーの改変は最小限に抑えているのに、しっくりいかない。もちろんこの題材なら当然2時間以内に収めるのが筋だ。しかも、この企画なら話を追うのは仕方ないし、ビジュアル重視も当然だ。だが、ラストでこんなにもいろんな意味でスケールダウンしたのはやはりもったいないし納得がいかない。

 もちろん、この映画で、オニ(式神)を自由自在に操ったバトルが迫力のあるものになるか、というとそうでもない。それも最初からわかっていた。スケールの問題ではない。ホルモーのシーンには原作もあまり仕掛けはない。だから延々ホルモーをみせる必要はない。あくまでもストーリー重視で作り、ホルモーでポイントを抑えることで、笑わせるに留めるべきだった。だからこれはこれでいいはずなのだ。これはあくまでも青春恋愛映画である。コメディーはその後に来る。間違ってはいない。

 ストーリーを単純にしたのに、そのストーリーを追うことで手一杯になってしまったのは、なんだかなぁ、とは思う。もう少し作りようがあったはずだ。だが、キャスティングはとてもいいと思う。主役の山田孝之が普通の大学生をよく演じているし、濱田岳はちょんまげがよく似合う。(しかも彼が暮らす西部講堂に作られたオンボロ学生寮もすごく面白い。)だが、せっかくの役者のがんばりがなぜかメーンのストーリーと上手く絡まない。これはたぶん演出の問題だ。

 このあきれ返るくらいにバカバカしいストーリーがリアルに見えるのは、平凡な大学生の日常のスケッチをベースにしているからだ。コミカルな処理を前面に押し出すとつまらなくなる。作り手もそこを承知しているのだが、全体のバランスが今一歩うまくとれていない。こういう荒唐無稽な話とありきたりな学生生活が完全に日常の中で同化して淡々と展開していくところにこのお話のおもしろさがある。もう少し抑えた作り方が出来なかったのか。

 山田孝之の情けない勘違い男と、芦名星の打算的だが思い込みが激しい女、そして何を考えているのだかわからない謎のマッシュルーム頭のめがね女、栗山千明の三角関係をどれだけ共感の抱けれるドラマとして構築していくかに映画の成否はかかっていた。ホルモーの試合以上にこちらのほうだ大事だ。こんなにもアホな話なので、どうしてもそちらに気を取られてしまう。しかも、ホルモーのシーンはつまらなかったならすべてがおじゃんになる。自然と気合が入る。しかたないことかも知れない。

 でも、ホルモー異常にこの日常のシーンが納得いかなかったなら、この映画はそれこそ成立しないのだ。笑わせるだけでは意味がない。いろんな意味で本木克英監督以下スタッフ、キャスト(荒川良々の499代会長は最高!)の頑張りは認めるが、あと一歩で及ばない残念な映画になった。

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